こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジョジョ・ラビット

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敬愛する総統閣下のためなら命を捨てても惜しくない。醜い角を隠しているユダヤ人どもを容赦なくぶっ殺せ。物語は、第二次大戦下のドイツ、ナチズムに傾倒する少年が、ユダヤ人少女に恋をしたことから起きる価値観の逆転を描く。自由にものが考えられなかった時代、プロパガンダに騙された無辜の市民は独裁者に対して絶対的な信頼をおいている。少年は過激なまでに独裁者の思想に染まってはいるが、なかなか行動に移す勇気を持てない。訓練合宿で張り切るが気持ちだけが空回りする。けれどやさしいママに見守られているとまた頑張ろうという思いが湧いてくる。戦時下でもおしゃれを忘れずダンスを愛するママを、スカーレット・ヨハンソンが可憐に演じていた。彼女の靴が象徴する楽しみと哀しみが強烈な印象を残す。

空想上の友人・アドルフに励まされて青少年団キャンプに参加したジョジョは大けがを負う。退院後帰宅すると、死んだ姉の部屋の隠し扉の奥でユダヤ人少女・エルサを発見する。

通報しなければならないのに、通報したら匿っていたママも逮捕される。現状維持しか選択肢がないと悟ったジョジョは、ユダヤ人への興味からエルサに接近する。そこで初めて知ったナチスの嘘。ユダヤ人といっても外見で見分けられず、話していると自分と同じ人間であると理解する。それどころかかなり年上のエルサに、ジョジョは憧れさえ抱いてしまう。もはや何が正しいのか何が間違っているのか己の頭では判断できない。それでも、ウサギを殺せなかった理性がジョジョに何をすべきかを示唆する。愛し慈しむ心は怒りや憎しみに勝るのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて連合国の侵攻を受け、町は瓦礫の山と化す。そんななか、青少年団の太った女性秘書は最後まで抵抗を貫く。一方でずっと前からドイツの敗戦を予想していた青少年団司令官は、人間としての良心を失っておらず、彼なりの精いっぱいの善意を示す。子供たちの未来のために少しでも役に立とうとする、このキャラのおかげで非常に後味の良い作品になった。

監督  タイカ・ワイティティ
出演  ローマン・グリフィン・デイビス/トーマシン・マッケンジー/タイカ・ワイティティ/レベル・ウィルソン/スティーブン・マーチャント/サム・ロックウェル/スカーレット・ヨハンソン
ナンバー  12
オススメ度  ★★*


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