こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

 

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密室に閉じ込められた複数の男女。外部とは連絡が取れない。だが、彼らにしか知らされていない秘密がすっかり漏れている。物語は、人気作家の新作を発売前に公表すると脅された出版エージェントと脅迫者の駆け引きを追う。容疑者は集められた翻訳家たち。彼らには完全なアリバイがある。ひとりではできない。誰が計画したのか、誰が協力者なのか、その動機は? 文学を商品ととらえ金儲けの手段にする社長と、文学を芸術として愛する翻訳家たち。権力や暴力では抑えつけらない魂の自由を信じる翻訳家たちは団結して社長と対峙するが、やがて心の弱い者は脱落していく。二重三重の仕掛け、あっと驚く犯人の大胆な行動、そして過去に秘められた因縁。久々にミステリーの醍醐味を味あわせてくれる作品だった。

地下シェルターに監禁された9人の翻訳家が作業を進めていると、雇い主・エリックのスマホに “期限までにカネを支払わなければ数十ページずつネットに公開する” というメールが入る。

エリックは犯人探しを始めるが、当然名乗り出る者はいない。翻訳者の間でも疑心暗鬼が募り、お互いを監視する。モニターに残された記録も、犯人が9人の中にいることを示唆している。皆エリックに反感を抱いている。それでも全員が彼を憎んでいるわけでもない。自己主張の強い者、慎重な者、のめり込むもの、シニカルな者、クールな者。それぞれを個性的に描き分けて人物像に奥行きを持たせ犯人捜しの興味を盛り上げていく手法は古典的だけれども、力強い映像がぐいぐいと引っ張ってくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

エリックは反抗的な英国人の若者・アレックスにアタリをつけ、秘書に身辺調査させると、疑わしい証拠が次々と出てくる。しかし、脅迫の手口まではわからない。ひとつ謎を解いてもまたその先に待ち構えている謎。どんでん返しと思わせてさらにもうひとひねりを加えたサービス精神。出版前の本を “人質” に取る斬新なアイデアと巧妙なトリックに目を見張っただけに、最後まで非暴力を貫いてほしかったが。。。

監督  レジス・ロワンサル
出演  ランベール・ウィルソン/オルガ・キュリレンコ/ アレックス・ロウザー/フレデリック・チョウ/マリア・レイチ/サラ・ジロドー/パトリック・ボーショー
ナンバー  16
オススメ度  ★★★*


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