こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジュディ 虹の彼方に

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ハリウッドの神話となった女優はスタジオの奴隷だった。食事は制限され睡眠時間は削られプロデューサーに忠誠を誓わされマネージャーは四六時中目を光らせている。スクリーンで演じる理想の少女像とは正反対のままならない日常。物語は、往年のミュージカルスターが再起をかけたコンサートに臨む過程を追う。ドラッグとアルコールで気分は定まらない。カネに困って引き受けた仕事なのに、本番が近づくにつれ気まぐれ病が再発する。ところが舞台に立つと一瞬でオーラをまといエンタテイナーに変身する。スポットライトと観客の視線、注目されることでスイッチが入るのだ。そんなプロ意識こそが芸能人に刷り込まれた本能なのだ。愛にも運にも見捨てられたヒロインに扮したレニー・ゼルヴィガーが圧倒的な存在感を示していた。

借金や不払いで住むところもなくしたジュディはロンドンでの公演をオファーされる。英国では人気絶大でチケットは完売、用意されたスイートルームに機嫌よくなるが、リハーサルは拒否してしまう。

せっかく復帰するチャンスにもかかわらず、大切に扱ってくれる人々の期待をあえて裏切る行動をとるジュディ。まるで自分のワガママをどこまで聞いてくれるかを測る駄々っ子のごとき態度は、大人としか交流してこなかった少女時代の名残り。一方で、彼女で一儲けを企むミッキーという若い男の甘い言葉は鵜呑みにし、4度の離婚歴にも懲りず白馬の騎士を待つような幻想を抱いている。1969年の47歳は2020年の60歳ぐらい老けている。なのに精神的にはまったく成長していないジュディの大人げない姿が哀切を誘う。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

当初は好評だったものの、客を罵倒したりステージで倒れたりしてジュディは契約を打ち切られる。それでも、お情けで握らせてもらったマイクで彼女は “Over the rainbow” を披露する。ファンにとってジュディは永遠のドロシー、彼女自身もドロシーのままだったのだろう。現実はどれほど厳しくとも、彼女が歌った夢と希望はいつまでも人々の心に生き続けているとこの作品は訴える。

監督  ルパート・グールド
出演  レニー・ゼルウィガー/ジェシー・バックリー/フィン・ウィットロック/ルーファス・シーウェル/マイケル・ガンボン
ナンバー  9
オススメ度  ★★★★


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