こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

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警察に集められた参考人たちが話している途中でピアノの鍵盤をたたき、話の腰を折る男。刑事たちも彼には一目置き、事情聴取の場に同席させている。ダニエル・クレイグ扮する探偵が現れるシーンは時代がかった雰囲気が充満し、一気に本格ミステリーの世界にいざなってくれる。物語は、売れっ子作家自殺の再調査で、隠された真実が解明されていく過程を描く。家族と様々な金銭的トラブルを抱えていた作家だったが、殺されるほど恨まれていたとは思えない。現場の状況から自殺だったのは間違いない。動機があると推測される人物にはみなアリバイがある。巧妙なトリックと仕組まれた罠、証拠と証言から複雑に絡まり合った偶然と必然をほどいていく展開はまさしくミステリーの王道を行く。大げさな音楽と癖のある登場人物は古典的な風格すら漂わせていた。

誕生日パーティの翌朝死体で見つかったハーランは、莫大な遺産の相続人に専属看護師のマルタを指名する遺言を残していた。カネに困っている遺族は思惑が一致、マルタを説得しようとする。

匿名の依頼人に雇われた探偵・ブノワは遺言開封前に関係者の聞き取りを終えていたが、相続にマルタが絡んできたことで幾重もの疑問符に頭を悩まされる羽目になる。ドーナツの穴を埋めるドーナツにも穴が開いている状態、二重三重に張り巡らされた伏線、謎を一つ解決すればさらなる謎が待っている。21世紀のミステリーは4段構えくらいにしないとファンが納得しないと知っていて新たな創作に挑戦する脚本・監督のライアン・ジョンソンの奇知には頭が下がる思いだ。どこかに瑕疵はないかと五感を研ぎ澄ましたのだが、初見では気づかなかった。嘘をつくと嘔吐するマルタの体質もウイットが効いていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

誤解と気遣いが重なってハーランは自殺したのが明らかになるが、ブノワの依頼人の正体も暴かなければならない。さらに送られてきた脅迫状と証拠隠滅のための放火。そして事件の意外な全貌。久しぶりに最後まで緊張を引っ張り続けた作品だった。

監督  ライアン・ジョンソン
出演  ダニエル・クレイグ/クリス・エバンス/アナ・デ・アルマス/ジェイミー・リー・カーティス/マイケル・シャノン/ドン・ジョンソン/トニ・コレット/フランク・オズ/クリストファー・プラマー
ナンバー  25
オススメ度  ★★★★


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