こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グッドライアー 偽りのゲーム

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嘘つきほど自分を誠実に見せようと心にもない言葉を口にする。最初についた小さな嘘を自ら告白して許しを請い、相手の気が緩むと少しずつ本性を露にしていく。物語は、熟練の老詐欺師が資産家老女から財産を巻き上げようとする姿を描く。頭脳明晰だが世間知らずな彼女は、用心深いけれど時間と共に儲け話に興味をひかれるようになる。老詐欺師はそんな彼女と、老後の寂しさを紛らわすためにお互いに寄り添うような関係を作る。やさしさと謙虚さ、他人の信頼を得るには己の気持ちを押し付けるのではなく、思いやりが大切だと彼は知っている。簡単にはいかないけれどほぼ計画通り、ところが思わぬ場所で老詐欺師は過去と対峙する。ヘレン・ミレン扮する老女のお人好しキャラが、逆に彼女こそが罠を仕掛けた側だと予感させる。

ロンドンの出会い系サイトで知り合ったロイとベティは好相性。面会を重ねるうちに足の悪いロイがベティの家で暮らすことになる。余命短いベティの願いでふたりはベルリン旅行に出かける。

ベティとのデート中に抜け出し、同時進行でロシア投資詐欺を進めるロイ。カモから大金をせしめ、文句を言う部下に制裁を加える。ベティの前では杖をついているが、彼女が見ていないときは速足で歩く。使い分けが完璧にできるロイの詐欺師としての能力の高さをうかがわせる。それだけではなく、時に殺人さえ厭わない。温和な紳士に見えるが冷酷な悪党のロイがいつ報復を受けるのか、ベティは彼にどんなトラップを用意しているのか、いやがうえにも期待が膨らんでいく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ベティにはスティーブンという孫がいて、ボディガード代わりにベルリンにも同行する。そこで明らかにされるロイの秘密。それでもロイは必死でベティを言いくるめる。スティーブンも、ベティからロイが離れていかない程度の暴露にとどめ、ベティに食いついたロイはさらなる深みにはまっていく。騙したつもりが騙されていた。裏切りは必ず報いを受ける。先の大戦は21世紀になっても終わっていないとこの作品は訴える。

監督  ビル・コンドン
出演  ヘレン・ミレン/イアン・マッケラン/ラッセル・トベイ/ジム・カーター
ナンバー  26
オススメ度  ★★★


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