こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

1917 命をかけた伝令

f:id:otello:20200217133509j:plain

ぬかるみと水たまり。ハエがたかった馬の死骸。鉄条網に引っかかった遺体は放置されたまま。死肉をむさぼるネズミは巨大化して人を恐れない。一時的に戦火は止んでいるがどこに敵が潜んでいるかわからない。塹壕から這い上がり敵陣に向かった2人の若者は、不安と緊張の中、ひたすら前進する。物語は、第一次大戦中、英国軍兵卒が命令書を送致するために死地を踏破する過程を描く。極めて危険な任務、罠が待ち構えている。狙撃手が銃口を向けている。それでも友軍の命を救うために後戻りはできない。カメラはショットを途切れさることなく2人に寄り添い、時間を共有する。彼らの感情と息遣い、目にした光景と耳にした音、その緻密に計算されたカメラワークから生まれた映像は圧倒的な臨場感をもたらし、まるで3人目の伝令になったかのごとき気分になる。

総攻撃のために出撃した連隊に中止命令書を届けるブレイクとスコフィールドは、ドイツ軍が撤退した後の塹壕にたどりつく。だが、仕掛け爆弾で崩落、スコフィールドは瓦礫の下敷きになる。

英独の戦闘機が空中戦を繰り広げていても彼らは他人事のように見上げている。航空機が珍しく、その重要性が末端兵には十分に浸透していなかったのだろうか。被弾した敵機がすぐそばに不時着して初めて彼らは反応、燃え盛る機体からパイロットを救出する。このあたり、一兵卒といえども名誉を重んじる前近代的な騎士道精神がまだ生きていたことを示す。一方で、先走っていたブレイクに対し損な役回りを押し付けられたとスコフィールドがぼやくなど兵士の等身大の心情も再現、彼らが遠い昔のヒーローではなく生身の人間だったと教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

1人になったスコフィールドは友軍の援助を受けたのち狙撃手との対決で時間を浪費する。気づくとタイムリミットの夜明けが迫り、ドイツ軍哨戒地域を最短距離で突破しなければならない。最後の力を振り絞って走り続けるスコフィールドの姿は、戦場での英雄的な行為には大きな代償がともなうと訴えていた。

監督  サム・メンデス
出演  ジョージ・マッケイ/マーク・ストロング/ディーン=チャールズ・チャップマン/リチャード・マッデン/ベネディクト・カンバーバッチ/アンドリュー・スコット/コリン・ファース
ナンバー  29
オススメ度  ★★★*


↓公式サイト↓
https://1917-movie.jp/