こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デンジャー・クロース 極限着弾

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迫撃砲の砲弾が降り注ぐ。なのに見張りはビールを飲み、敵を仕留められない。士官はトランプをやめず下士官に一喝される。すぐそばに敵が迫ってきている前線基地とは思えないほど緊張感は低い。そんな、米国映画では見られない戦闘時のユルさが印象的だった。物語は、ベトナム戦争に出兵したオーストラリア軍の奮闘を描く。ゴム林の奥に設営されたベースキャンプを死守するために選ばれた小隊は、ほとんどが20歳前後の若者たち。倒しても倒しても押し寄せてくるベトコンに対し、勇敢さはやがて不安と恐怖にかわっていく。圧倒的な数的不利の中、ひとりまたひとりと銃弾の餌食になっていく。それでも孤立した友軍の救出に向かう兵士たち。防共の名目の下、米国に付き合わされて参戦した彼らに大義はあったのだろうか。。。

深夜に砲撃してきたベトコン部隊掃討のために、10・11・12の3小隊が前線に送られる。だが、ベトコンは人海戦術で彼らを包囲、追い詰められた11小隊は自分たちを狙って大砲を撃てと司令部に伝える。

20~30メートル先まで接近したベトコンと激しい銃撃戦を繰り広げるオーストラリア軍。ランボーのようなスーパーヒーローがいるはずもなく、ベトコンの機関銃掃射で次々と脱落していく。地面に這いつくばって首をすくめていても頭に被弾すると即死、肩や体に当たった銃弾は貫通せずおびただしい出血と痛みに耐えなければならない。必死に応戦するも、次から次へと突撃してくるベトコン相手に銃弾は切れもはや絶体絶命。なんとかヘリによる補給を得て反撃するが、ベトコンの波状攻撃は止まらず、11小隊は全滅寸前まで追いこまれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

米国製ベトナム戦争映画とは違い、兵士がドラッグに走ったりトラウマに悩まされたり内省的になったりはしない。また、ベトコン側の視点で振り返るわけでもない。社会主義国の脅威があったとはいえ、母国の青年たちが戦場で散った事実はオーストラリア人にとっては忘れてはいけない歴史。彼らを英雄ではなく英霊として偲ぶ姿勢はあくまで謙虚だった。

監督  クリフ・ステンダーズ
出演  トラビス・フィメル/ルーク・ブレイシー/ダニエル・ウェバー/アレクサンダー・イングランド/アーロン・グレナン/ニコラス・ハミルトン/ リチャード・ロクスバーグ
ナンバー  31
オススメ度  ★★★*


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