人事権を握る男と密室で2人きり、要求を拒めばチャンスは潰される。それでもぎりぎりのプライドは守りたい。女たちは追い詰められた状況でどうやって切り抜けるか頭を高速回転させる。物語は、大手TV局で起きたセクハラ事件を追う。性的奉仕をほのめかされてもその見返りは大きい。むしろ引き上げてくれたことを感謝している女もいる。だが、人間の本質の部分を否定され精神的にレイプされた傷はいつまでも疼いている。告発すべきか静観すべきか。女たちはそれぞれ自分の現在と未来を天秤にかけ慎重な選択を下さざるを得ない。生き馬の目を抜く厳しい競争社会、ライバルを蹴落としてでものし上がろうとする激しい上昇志向の女たち。彼女たちをセクハラの被害者としてだけではなく苦悩する人間として扱うスタンスがスリリングだ。
マイナー番組のMC・グレッチェンはCEOのロジャーの意に背きクビになると、ロジャー相手にセクハラ訴訟を起こす。しかし彼女の賛同者は現れず、社内ではロジャー支持者が多数派を占める。
グレッチェンの助手だったケイラは、パンツが見えるまでスカートをまくり上げさせるという屈辱的な仕打ちをロジャーから受ける。羞恥に顔を歪ませるケイラを見て楽しむロジャーの卑しさが、忠誠心を求める権力者の歪んだ欲望を象徴していた。一方で、大統領選に臨むトランプ候補へのインタビューが物議をかもし、トランプ支持の会社との軋轢に苛まれていたメーガンは、ロジャーから執拗にキスを迫られた過去を思い出す。グレッチェンとは距離を置いていた彼女は、いま行動を起こさなければこの先も被害者が出ると告発を決意する。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ひとりの勇気のおかげで、封印していた嫌な記憶にきちんとけりをつけ前に進むと決めた多くの女たちが声を上げる。確かにロジャーは卑劣だが、彼女たちにも彼の性向を利用しようと思ったことはなかったか。そんな葛藤の末にセクハラ被害者たちがロジャーを断罪する。ただ、セクシーさを売りにしてきた彼女たちの責任も、もう少し問われてもいいのではないだろうか。
監督 ジェイ・ローチ
出演 シャーリーズ・セロン/ニコール・キッドマン/マーゴット・ロビー/ジョン・リスゴー/ケイト・マッキノン
ナンバー 38
オススメ度 ★★★
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