こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

永遠の0

otello2013-12-24

永遠の0

監督 山崎貴
出演 岡田准一/三浦春馬/井上真央/濱田岳/新井浩文
ナンバー 304
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

妻と子に会いたい、部下の肉親も悲しませたくない。そんなゼロ戦操縦士の願いは踏みにじられ、いつしか絶望に変わり、彼自身を追いつめる。無駄死にする多くの若者を目の前にどうすることもできず無力感にさいなまれる中、命の値打ちを問い続ける彼は、一縷の望みを託し、戦場に散っていく。物語は、戦没した祖父の人となりを調べる孫たちが、様々な戦友の証言を得て人物像を再構築する過程を描く。 “天皇のために潔く死ぬ”のが軍人の名誉と叩き込まれた戦時中、家族を守ろうとする道を選んだ男のかたくななまでの態度が示すものは、祈りにも似た彼の愛。温厚な人柄の中に強い意志を秘めた主人公を岡田准一が熱演、理性が失われた時代の悲劇を再現する。

祖母の葬儀で生物学上の祖父・宮部久蔵の存在を知らされた健太郎は、昭和20年に戦死した宮部の調査を始める。海軍一の臆病者と言われていた宮部は抜群のゼロ戦操縦術を持ちながら、常に無事を最優先させるパイロットでもあった。

真珠湾奇襲の成功に酔う中でも、帰ってこなかった仲間を偲び、空母を撃沈しなかったのを悔やむ。さらに長所とされたゼロ戦の航続距離の長さこそ弱点と見抜いている。しかし、どれほど理論立てて説明しても精神論が幅を利かす世界では誰にも聞く耳を待たれず、腰抜けと非難されるばかり。宮部は高度な教育を受けた職業軍人だから武力行使そのものは否定しないはず。だが、ほとんどが海上で撃墜される特攻には嫌悪感を抱く。それは生きる意味を突き詰めて考えれば、おのずといかに死ぬべきかの答えが出るからなのだ。打ちひしがれた宮部の姿は合理的な思考が無視される全体主義の恐ろしさを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

教え子たちが次々と出撃するのを止められない宮部は胸の痛みに耐えきれず、自分も特攻を志願する。それでもなお心を占めていた妻と娘への変わらぬ思い。そして健太郎はついに宮部が残した最大の秘密にたどり着く。わが身に宮部の血が流れているのを誇りに思える健太郎が、何よりも平和の大切さを訴えていた。

オススメ度 ★★★*

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