こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シークレット・ウインドウ SECRET WINDOW

otello2004-10-27

シークレット・ウインドウ SECRET WINDOW


ポイント ★*
DATE 04/10/23
THEATER 109シネマズ港北
監督 デヴィッド・コープ
ナンバー 126
出演 ジョニー・デップ/ジョン・タトゥーロ/マリア・ベロ/ティモシー・ハットン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

予告編を見たときから予想はついていたが、映画が始まってわずか15分ほどでオチが分かってしまうとはなんという稚拙な構成なのだろうか。スランプに陥った小説家が現実世界と妄想の間の区別がつかなくなる。そして、いつしかその妄想が一人歩きし始め手に負えなくなる。物語を紡ぎだす職業の人間だけが陥る歪んだイマジネーションの世界が、元の人間を食い尽くしてしまう。そういう虚実皮膜の間をさまよう様子を観客が感情移入できるように描かれていないから、全然怖さはないし、緊張感もない。何より狂気にがんじがらめにされていく過程が省かれているため、リアリティがまったく感じられない。サイコスリラーでは致命的な欠点だ。

人里はなれた湖の畔のキャビンでひとり小説を書くモート。ある日、彼の前にシューターという男が現れ「俺の作品を盗んだ」と言いがかりをつけ、原稿を残していく。しかしシューターの原稿はモートの作品と一字一句同じ。やがてモートの周りで人が次々と殺されていく。

実際の小説家の世界でも他人のアイデアや文章を盗むという行為は珍しくない。しかしながら、小説の最初の一句からずっと同じ単語・文章が並ぶということはありえない。その時点で、このシューターという人物はモートの作り出した虚像であることがばれている。しかもご丁寧にハウスキーパーに「違う名前で小説を書くこともある」というセリフまで言わせているのだ。

もちろん、原作を読んでストーリーを知っている人向けに作られた映画なのかもしれない。それでもモートが精神の平衡を失っていく過程を皮膚感覚あふれるような描写でもっと丁寧に描いて、作家の職業病が生み出す別人格が生み出すホラーのようにすれば少なくとも退屈はしなかっただろう。原作を読んだ人も読んでいない人もこの作品を見て共通の感想を持つとしたら、それは上映時間が短くて助かったということぐらいだろう。

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