こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オールド・ボーイ

otello2004-11-13

オールド・ボーイ


ポイント ★★★
DATE 04/11/6
THEATER 平和島シネマサンシャイン
監督 パク・チャヌク
ナンバー 130
出演 チェ・ミンスク/ユ・ジテ/カン・ヘギョン/チ・デハン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人間はここまで復讐に執着できるものなのだろうか。15年、いや、高校時代にさかのぼるのだから25年ぐらいは復讐相手を憎む気持ちを維持し続けなければならない。その間、周到に準備し十分にカネをかけ実行に移す。ともすれば気持ちがなえることもあるだろう。憎しみの炎を絶やさず燃えたぎらせ、それを命を懸けたゲームとして楽しむ。復讐こそわが人生、そんな不気味な男の高笑いが耳に残る。


平凡なサラリーマン・オはある日誘拐され狭い部屋に監禁される。そして15年、突然解放される。すし屋で知り合った若い女・ミドの助けを借りて復讐を誓うオはウジンという謎の男にたどり着くが、ウジンはオに5日以内に監禁された理由を解き明かせと迫る。そして、オの復讐と自分探しが始まる。


自分が何の気なしに口にしたひと言が、他人を傷つけ、時には命をも奪いかねない恐ろしさ。当然、命を失った人間を愛している者がいれば悲しみ、怒るだろう。そして恨みを買い、やがてそのツケを払わなければならない。ウジンは自分の姉を死に追い込んだオにもっとも残酷な方法で復讐した上に十分な利息まで払わせるのだ。そこに至る構成が上質なミステリー仕立てで、オが監禁の謎を解く様子がわずかなヒントや伏線から組み立てていく過程に過剰な暴力を加えながら、インパクトのある映像で迫る。ただ、音楽が感情過多で映像をよりベタにしてしまい耳障りだ。音楽をもう少し抑えたタッチにしていれば、映像とのバランスが取れていたはずだ。


ウジンは自分の姉をオが高校時代に流したデマのせいで亡くしていた。そのことを思い出させた上に、オにオの実の娘であるミドと愛し合うように仕向けるという残酷な復讐を成し遂げる。しかし、その後のオのざんげや殺戮などまったく不要。ここはオがミドの成長アルバムを見て真実に気づき、ウジンが満足の表情をするという感じで終わらせるべきではなかったか。エンディングに余韻を持たせ、観客の想像力をかきたてたほうがスマートなのは確かだ。


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