こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハウルの動く城

otello2004-11-24

ハウルの動く城


ポイント ★★*
DATE 04/11/20
THEATER ワーナーマイカルつきみ野
監督 宮崎駿
ナンバー 137
声の出演 倍賞千恵子/木村拓哉/美輪明宏/我修院達也/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


航空機による大規模な爆撃、空襲に逃げ惑う市民。一方では魔法で空を歩いたり呪いをかけたり。戦争が近代化して大量殺戮が可能になった時代に魔法使いはまったく時代遅れになってしまう。科学という圧倒的な力が魔法などという前近代的なものを駆逐しつつある時代、魔法使いにできることは兵役拒否という形で戦争に反対することぐらいなのか。なるほど反戦のメッセージ性はこの作品には随所にうかがえるのだが、そこになぜ魔女や魔女に呪いをかけられた少女が絡んでくるのか必然性が希薄だ。反戦を訴えたかったのなら魔法使いなど不要だし、魔法使いと少女の恋を通じて人間の成長を見せたいのなら近代的戦争を背景にするのはそぐわない。


帽子屋の跡とり娘・ソフィーは兵隊に絡まれているところをハウルという魔法使いに助けられる。その夜、ハウルを追っていた魔女がソフィーの前に現れソフィーを90歳のばあさんに変えてしまう。ソフィーはその呪いを解くためにハウルの城に住み込んでいつしか一緒に暮らし始める。やがて戦争が勃発、ハウルの下にも召集が来る。


呪いをかけられて以降のソフィーのキャラクターがよくわからない。ハウルの城に行くまではよぼよぼなのに、城についたとたん元気になるのはハウルの魔法のおかげなのか。王宮に行くときに呪いをかけた魔女と会うのに帰るときはなぜか一緒だし、魔法使いの師匠が犬をスパイとしてハウルの城に送り込んだのにいつの間にかソフィーになついている。また、戦争が始まるとソフィーの姿は元の少女に戻ったり中年になったりおばあさんになったりとめまぐるしく変わる。恋する乙女心はうつろいやすい、というソフィーの心理状態を表わしているのだろうか、それとも呪いが解け始めているのだろうか。


たくさんの登場人物と膨大な情報量、そして不可解な心理描写。ハウルもソフィーも、その行動や動機がほとんど理解できないまま映画は終わってしまった。唯一、かかしのカブだけが共感を持てるキャラクターだが、このかかしとてカオナシのような人気キャラ成長するにはいまいち個性に欠けていた。


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