こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジョヴァンニ IL MESTIERE DELLE ARMI

otello2004-11-27

ジョヴァンニ IL MESTIERE DELLE ARMI

ポイント ★★
DATE 04/11/22
THEATER シャンテ・シネ
監督 エルマンノ・オルミ
ナンバー 138
出演 クリスト・ジフコフ/デシィ・テネケディエヴァ/サンドラ・チェカレッリ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


銃器という破壊兵器が戦争の形を根本的に変えた、ということを描きたかったのだろうか。火縄銃に続いて大砲の出現で騎士と騎士が直接矛を交えて戦う古典的な戦い方が通用しなくなり、顔の見えない相手から目に見えない速さで飛んでくる鉛の弾に撃たれ力尽きる騎士たち。そういう近代的な飛び道具はやがて核ミサイルという大量破壊兵器に発展し、人類を滅ぼすかもしれないという危惧を抱かせる。この映画の始まりと終わりの言葉はそんなイメージを膨らませてくれるのだが、映像として描かれている内容は観念的で中世イタリア史に疎い者には理解の範疇を超えている。


16世紀前半、ゲルマン軍がイタリアに侵攻、迎え撃つローマ教皇軍の武将・ジョヴァンニは勇猛を馳せゲルマン軍を打ち破る。しかし、イタリア諸侯の裏切りにあった上にゲルマン軍との合戦で大砲の弾を足に受け、その傷がもとで命を落とす。


映画は主人公・ジョヴァンニが息を引き取る直前の数日間にスポットを当てている。小国が分裂状態だった当事のイタリアで、諸侯の生き残りのための権謀術数に翻弄される武将の姿が描かれているのだが、ストーリーが一貫した構成になっていないので全体としてはほとんど意味不明。その過程で、ジョヴァンニの騎士としての誇り高い戦い方、すなわち生き方が描かれていれば、あくまで騎士道を重んじ銃器による合戦を潔しとしない「THE LAST SAMURAI」ならぬ「THE LAST KNIGHT」として、洗練されたエンタテインメントとして昇華されていたはずだ。


細部にいたる作りこみは鮮やかで甲冑・馬車などにカネがかかっていることは窺える。雪の平原や霧の立ち込める川べりでのロケは陰鬱な雰囲気を饒舌に醸し出す。ルネサンス期のイタリアといえば芸術を人文を再生した素晴らしい時代という一般的な印象を覆す、科学や技術の進歩の裏側の歴史と捉えられないこともない。しかし、この作品にはイマジネーションをそこまで刺激するファクターには決定的に欠けていた。


他の新作を見る