こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ターミナル

otello2004-12-24

ターミナル THE TERMINAL

ポイント ★★★
DATE 04/12/19
THEATER 109シネマズ港北
監督 スティーブン・スピルバーグ
ナンバー 150
出演 トム・ハンクス/キャサリン・ゼタ・ジョーンズ/スタンリー・トゥッチ/チー・マクブライド
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


誰かを待つ。何かを待つ。待ち望んだものがいつやってくるのかはわからない。だからこそ期待に胸が膨らみ、希望に心が弾む。祖国を無くした男が国際空港の乗り換えターミナルというニュートラルな場所に軟禁状態に置かれながらも、決して入国をあきらめず自分の夢をかなえようとする姿を通して人生の意味を問う。いつ下りるかわからない入国許可を待ちながら、この主人公は巧みにサバイバルしていく。


ニューヨークに向かう途中に祖国の政府がクーデターで倒れ、国籍もパスポートも無効になった男・ナボルスキー。空港警備局からは入国を認めらず帰国もできない。仕方なくナボルスキーは使われていないターミナルで暮らし始める。やがて、友人ができ仕事も得、時たますれ違うスチュワーデスに恋をする。


英語がわからずカネもないナボルスキーが独力で生きようとする生命力が素晴らしい。カートを集めて小銭を手に入れ、左官の腕を見込まれて建築現場で働き始める。一方でガイドブックを参考書代わりに英語を学ぶ。決して悲観的にならず自分の意志を貫く。急がずあせらずじっとチャンスが来るのを待つ。効率でしかモノを考えなず、事なかれ主義の警備担当主任を彼の対比として描くことで、人間として豊かな人生を送るとはどういうことかを教えてくれる。


しかし、人間同士の思いやりや交流は心温まるものがあるのだが、男女の愛にいたってはとても拙い。ナボルスキーが思いを寄せるスッチーと食事するシーンやナポレオンにちなんだ噴水をプレゼントするシーンなどクサくて見ていられない。スピルバーグほどの巨匠なら、もう少し洗練された表現テクニックを見せて欲しいものだ。それに彼がニューヨークに来た目的、もったいぶっていた割りにはそれほど秘密にするようなことでもないだろう。ナボルスキーが目的を叶えるところをあっさりと終わらせるのは、この旅で彼が得たものは父との約束を果たしたことよりもっと大きなものを手に入れたからだろう。

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