こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

恍惚

otello2004-12-28

恍惚 NATHALIE…

ポイント ★★★
DATE 04/12/22
THEATER BUNKAMURAル・シネマ
監督 アンヌ・フォンテーヌ
ナンバー 151
出演 ファニー・アルダン/エマニュエル・ベアール/ジェラール・ドパルデュー/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


倦怠、沈黙、馴れ合い。数十年も一緒に暮らした夫婦にはもはやときめきなどなく、あるのは漫然と続く日常生活だけだ。しかもお互い働いていれば、どうしても仕事が中心の行動様式が確立する。いつしか心は離れ、同じベッドで寝ていても体の触れ合いもなくなる。それでも波風を立てないように言いたいことを胸にしまうのが大人の分別だ。夫なのに年月を経るほど知っていることより知らないことのほうが多くなっていく、しかも一度疑惑の目を向けるとますます抱えているものが大きくなる。そんな妻の嫉妬と好奇心が抑制の効いたタッチで描かれる。


夫の浮気を知ったカトリーヌは、夫が自分以外の女にどういう行為をするのかを知りたくなり、マルレーヌという娼婦を雇って夫を誘惑させる。マルレーヌはナタリーと名乗って夫に近づき二人はすぐに深い関係になる。マルレーヌに夫との行為をレポートさせるカトリーヌ。夫とカトリーヌの行為は次第にエスカレートしていく。


カトリーヌはマルレーヌの報告に嫉妬を覚えながらもどこかでもっとみだらな関係を期待している。更年期も過ぎても女としての魅力と欲望を捨てないカトリーヌに、フランス女性の誇りを感じる一方物足りなさも否定できない。マルレーヌと夫の物語を思い出しながら、夫のいないベッドで満たされない体の渇きを自分の指で癒すくらいの表現があってもいいのではないだろうか。カトリーヌのそんな心の機微を視覚化することで、生涯女であり続けようとする彼女の強い意志が具現化できたはずだ。


結局、マルレーヌがカトリーヌに語った夫の性癖はすべてウソだということがわかる。だまされたと知っても、カトリーヌは怒らない。彼女とてその間に年下の男を誘惑し自分がまだ衰えていないことを確認し、自分が思っているほど夫は外でモテるわけではないことに安心したからだ。最後にこの夫婦はお互いの愛を再確認しあうが、もう少しエスプリの効いた心理表現をしてもよかったのではないだろうか。


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