こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

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otello2005-01-08

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ポイント ★★*
DATE 04/12/25
THEATER チネチッタ
監督 片岡K
ナンバー 154
出演 上戸彩/中村七之助/神木隆之介/菊川怜/小島聖/田中好子 /
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


どんなに酷使してもすぐに回復する体力とスポンジのように知識を吸収する記憶力だけを根拠に、自分には無限の可能性がありどんな夢でも努力すればかなうと信じられる年頃。でも、肝心の夢が何なのかわからない。「あんたには人生の目標がない」といわれても、言い返すことができない。そんな自分に苛立ちながらも自分の生きる意味を模索する女子高生という、誰もが経験する若き日々の悩みを乾いたタッチで活写する。


高2になったばかりの朝子は突然学校がいやになり、親に秘密で登校拒否。ぶらぶらしているときに知り合った小学生・カズヨシに誘われ、パソコンチャット嬢のバイトを始める。チャット上では専業主婦になりきり、バーチャルな人格を形成して仮想空間での文字会話セックスを楽しむ。そんなある日、チャット相手に自分の本性を見破られ、朝子は落ち込む。


映画の3分の1ほどを占める朝子の妄想シーンがとてもチャチだ。人体標本になった朝子、国際会議でつるし上げられる朝子、そして花魁部屋で男と交わる朝子。すべてが安っぽくて奥行きがなく、逆にそれが女子高生の想像力の限界を示しているようで妙に説得力がある。まったりとした音楽も妙に作品にマッチしている。しかし、朝子の17歳なりの苦悩というものがすべてナレーションで処理されているのはどうしたことだ。そこを朝子の行動で示し映像化してこそ映画にした意味があるはずだが。


もともと原作者が女子高生時代に少しの体験と想像力を膨らませて書いた小説の映画化だ。女子高生の目線の高さに立った映画作りをしていると考えれば、この作品の稚拙な表現術も納得できる。しかし、大人が鑑賞するにしてはみずみずしい感受性の発露といったシーンがなく、ただただ女子高生の退屈な日常を覗いただけという印象は拭いきれない。


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