こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

セルラー

otello2005-03-04

セルラー CELLULAR


ポイント ★★★*
DATE 05/2/26
THEATER ワーナーマイカルつきみ野
監督 デヴィッド・R・エリス
ナンバー 25
出演 キム・ベイジンガー/クリス・エバンス/ジェイソン・ステイサム/ウィリアム・H・メイシー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


携帯電話という小道具の特性と欠点を生かし、機動性とアイデアに富んだ脚本は手に汗握る展開を生む。平和な家族の生活をいきなり破る暴力、そしてノーテンキな若者の肩にのしかかる重い責任。見ず知らずの人間から突然受けた救いを求めるコールに、ボランティアの気持ちが芽生えやがて成長していく過程がスリリングで楽しい。無関係の男が事件に巻き込まれ何もわからないまま行動しているうちにやがて大きな陰謀を暴いていくという、ヒッチコック的スリラーに現代的味付けを加えたプロットは爽快な印象を残す。


子供を学校に送ったジェシカはいきなり暴漢に襲われ拉致される。理由もわからず監禁された彼女は壊された電話を修復し、たまたまつながった電話に出たライアンという青年に救援を頼む。ライアンは彼女の指示通りに動くが、ジェシカの子供も夫も誘拐され後手後手に回る。しかし、ライアンが陰謀を映したビデオを手に入れたことから形成は逆転する。


理由がわからないまま孤立したジェシカが電話を通じて状況を何とかコントロールしようという努力を重ね、それに答えようとライアンが奔走する。敵が何者かわからないまま追い、追われる緊張が全編を支配する。しかも警察はあてにできない。そんな中で2人は徐々に機転と行動力を身に着けていく過程が理論的に無理なく描けている。別れたガールフレンド、ムービー携帯、充電器、盗んだ車、生物の教師というジェシカの職業も伏線になっていて、それらが織り成す綾がクライマックスに向かって収斂していく手法は手堅い。


また、作品そのものが持つ明るさがいかにもLA的で主人公たちに暗さがない。本来ならこれほどの暴力が描かれていればシリアスなタッチで危機感を煽るような演出をするのだが、カリフォルニアの太陽が陰惨な事件を背景にしている割にはノリのよいテンポに仕上げている。ストーリーと雰囲気のミスマッチ。この映画にはプラスに作用している。


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