こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナショナル・トレジャー 

otello2005-03-18

ナショナル・トレジャー NATIONAL TREASTURE

ポイント ★★*
DATE 04/12/2
THEATER 日劇
監督 ジョン・タートルトープ
ナンバー 142
出演 ニコラス・ケイジ/ジョン・ボイト/ダイアン・クルーガー/ショーン・ビーン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


暗号の謎を解いたらまた次の謎。幾重にも張り巡らされた言葉遊びとヒントが知的興奮を刺激し、暗号と暗号の間に繰り広げられる派手な逃走と追跡が心理的興奮を引き出す。ところが、主人公を敵対関係にあるハンターとFBIが追い、主人公が追っ手をかわしながらも暗号を解くというこの手の作品には珍しく、ディズニー映画。健全な映画作りという縛りがあるために発砲シーンはあっても銃弾は決して人にあたらず、血は流れない。暴力も極力押さえられている。


テンプル騎士団が米国内に隠した財宝を捜し求める冒険家・ゲイツは手がかりとなる沈没船を見つける。隠し場所の謎を解くカギが米国独立宣言書の裏面にあると確信、ゲイツは厳重に警備された独立宣言を盗むことに成功する。しかし、そこに書かれていたのは次の手がかりに進むための謎かけだけだった。


暴力的表現をここまで抑えてしまうとかえって登場人物の痛みが伝わって来ない。財宝をめぐっての謀略や裏切りが茶飯事になっているにもかかわらず、だれもその落とし前をつけることはない。本来なら裏切った挙句に殺そうとした相手に対してもっと憎しみを抱くはず。また、次々と出てくる謎かけも矛盾だらけ。フィラデルフィアの鐘楼の影が指すレンガの位置など季節が変われば影も変わるだろうに。また、ホンモノの宣言書を手に入れた後だったら公文書館のアビゲイル博士をわざわざ危険を冒してまで救出する必要はないはず。ただ彼女が魅力的だから救ったというのでは説得力に乏しい。


やはり、歴史に重みがない米国内でソロモンの秘宝を源流とする財宝が隠されているという設定自体に無理があった。こうした宝捜しモノは、中東やヨーロッパのように古代や中世からの文明のある地域を舞台にしないと映画に奥行きが出てこないのだ。しかも、やたらけたたましいだけの饒舌な音楽がさらに物語の展開に水をさす。たかだか200年あまりの歴史しかない米国ではテンプル騎士団の財宝をもてあましてしまうだけだった。


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