こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バッド・エデュケーション

otello2005-04-20

バッド・エデュケーション LA MALA EDUCACION

ポイント ★*
DATE 05/4/43
THEATER テアトル・タイムズスクエア
監督 ペドロ・アルモドバル
ナンバー 46
出演 ガエル・ガルシア・ベルナル/フェレ・マルチネス/ハビエル・カマラ/レオノール・ワトリング
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


たった一つのシーンが作品全体をぶち壊してしまうことがある。登場人物の目を通して観客をだますのはいいのだが、確信犯で観客をミスリードするのは映画作家として失格。惹かれあう2人の少年が引き裂かれるシーンは、せっかくの上質なミステリーに致命的なダメージを与えている。なぜこのような初歩的な間違いを犯したのだろうか。


映画監督・エンリケのもとに少年時代の親友・イグナシオが現れ、彼らの少年時代を投影した脚本を置いていく。そこにか書かれていたのは寄宿学校時代のエンリケとイグナシオの恋。しかし、2人の仲はマローン神父に引き裂かれる。一方エンリケは、イグナシオの正体に疑問を持ち、彼の身辺を探るうちに意外な真実を知る。


イグナシオの持ち込んだ脚本を劇中劇として映像化し、さらに劇中劇の中で回想シーンが出てくるという二重の入れ子構造になっているにもかかわらず、スクリプトは簡潔にまとめられている。さらに、回想シーンの登場人物がそのまま現在のエンリケとイグナシオに反映されるという手の込んだ仕掛け。その上でもうひとつ謎解きが用意してあるというサービス精神。エンリケとイグナシオの心理的な駆け引きも緊迫感に富み、片時もスクリーンから目を離せない。


結局、イグナシオと名乗ってエンリケに近づいたのは弟のファン。なぜファンが兄を騙ってエンリケに接触したのかという理由もまた切なく、共感を呼ぶ。だからこそ、少年時代のイグナシオがエンリケと別れた時に、その顔がファンの顔とダブるシーンは許せない。このシーンが作為的に挿入されているために、誰もがイグナシオとファンを混同してしまうではないか。後に、イグナシオはオカマの麻薬中毒者にまで身を落とした上に、ついには中毒で死んでいて、彼の遺物を元にファンがイグナシオに成りすましていることが判明する。男同士の身を斬られるような愛ゆえに、この映画は限りない哀切感が漂う。


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