こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

花と蛇2

otello2005-05-23

花と蛇

ポイント ★★
DATE 05/5/16
THEATER シネマサンシャイン
監督 石井隆
ナンバー 61
出演 杉本彩/遠藤憲一/不二子/宍戸錠
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


脱がされ、縛られ、陵辱される。羞恥と苦痛が極限に達した時に見せる表情こそがSMの醍醐味。相手の体の自由を奪って、なおかつ精神的にも屈服させ上での恍惚の極致。前作には肉体的な責め同様、精神的な責めが素晴らしくスクリーンを凝視したが、この作品にはそうした心理的な駆け引きに乏しくインパクトにも欠けている。杉本彩だけはひとり肉体を惜しげもなくさらしてがんばっているのだが、物語の展開に乏しく映像の表現テクニックばかりに頼っている。


老画商の若妻・静子は夫の不能に熟れた体をもてあましている。ある日、夫が才能を見込んで仕送りしている画家の下を静子は訪れる。静子は彼の創作意欲をかき立てるために望むままに縄に縛られポーズを取らされる。そして出来上がった絵をパリの闇オークションにかけるためにパリ郊外の古城に忍び込むが、そこで思わぬ責め苦に見舞われる。


作品の根底に流れるのは年老いた夫の静子への愛。若妻を性的に満足させてやれない負い目から、わざわざパリにまで行かせて画家とセックスさせたり、闇オークションに向かわせたり。しかし、その行為が静子自身の意思で行われるのでは興味半減。本人が嫌悪し、極端に恥ずかしがることを強要することで支配被支配の関係を築き上げていく過程にSMの魅力を感じるのに、自発的行為ではテンションが上がらないのだ。


独特の雰囲気と物語性を持った前作とどうしても比べてしまうのだが、杉本彩にしても今回はハダカを見せびらかしているにすぎない。流麗なダンスもないし苦悶の果ての放尿もない。確かに年齢の相応のしっとりと落ち着いた肌と年齢にそぐわない見事なプロポーションは十分に鑑賞に耐えうるのだが、緊縛を忌み嫌いながらも受け入れていく静子の心理的な成長をきちんと描いてくれないと続編を作った意味がないではないか。


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