こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

炎のメモリアル

otello2005-05-27

炎のメモリアル LADDER 49


ポイント ★★★
DATE 05/2/9
THEATER 東宝東和
監督 ジェイ・ラッセル
ナンバー 19
出演 ホアキン・フェニックス/ジョン・トラボルタ/ジャシンダ・バレット/ロバート・パトリック
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


燃え盛る炎が闘志を刺激し、迫り来る危険が勇気を奮い立たせる。課された使命は鎮火と火災現場に取り残された他人の命を救うこと。自らの安全を顧みることなく修羅場に飛び込み、時には己の命を落とすこともある。そんな消防士の活躍を過剰な演出や特殊効果で描くよりも、人間味あふれるエピソードを丹念に語ることで後味のよい仕上がりとなっている。


穀物倉庫の火災鎮火にあたる消防士・ジャックは現場での事故で炎の中に取り残される。そんな時彼の脳裏には、新人としてボルチモアの消防署に赴任してきた日のことから、美しい妻・リンダとの出会い、厳しくも人情味にあふれる隊長・マイクや同僚と過ごした10年あまりの日々がよみがえる。ジャックは最初放水で鎮火にあたるホース隊にいたが、仲のよい先輩が殉職したことから、より危険な救出隊に志願していた。


もちろん火事の恐ろしさ、炎の凶暴さは描いているのだが、この作品が力を入れているのは消防士たちの人間ドラマだ。消火現場ではヒーローのように振舞う彼らも非番の時は酒場で騒ぐし、ホームパーティも盛んだ。何より隊員同士の絆を強めようとするマイクのきめ細かい心遣いが頼もしい。よい同僚と美しい妻に恵まれたジャックは着実にキャリアを積んでいく。


それでもどこか物足りないのは登場人物みな善人ばかりのところだ。災害の前では一致団結、邪なことは考えているひまはないということなのか。しかし、清濁併せ呑む懐の深さも必要だろう。たとえば備品を横流しするヤツとか、肉体的な衰えを隠しながら現場に出たせいで同僚の足を引っ張ってしまうベテランとか。みんながみんな一片の曇りもない心身ともに鍛え上げられたエキスパートばかりでは、やはり物語に奥行きが出ない。青少年向けにはよいだろうが、大人が見るにしては少し毒が薄すぎる。


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