こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オペレッタ狸御殿

otello2005-06-06

オペレッタ狸御殿

ポイント ★
DATE 05/3/28
THEATER ヘラルド
監督 鈴木清順
ナンバー 39
出演 チャン・ツィイー/オダギリジョー/薬師丸ひろ子/由紀さおり/平幹二朗
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ミュージカルとしては中途半端、コメディとしてのオチもなく、様式美の華麗さもない。鈴木清順の頭の中にある壮大な宇宙を映像化したのだろうが、それはまったく理解の範疇を逸脱した奇妙奇天烈な世界にしか見えなかった。本当は歌って踊る本格的なミュージカルを作りたかったのに、予算や時間の関係でこんな投げやりなものを作ってしまったのではないだろうか。映画としてはまったく破綻している。


世界一美しい人間の座を自分の息子・雨千代に奪われそうになった安土桃山は雨千代を暗殺しようとする。九死に一生を得た雨千代は狸姫に救われ、2人は恋に落ちる。狸の家臣、安土桃山の追っ手など様々な障害を乗り越え、2人はお互いの気持ちを燃え上がらせていく。


というようなストーリーが一応は用意してあるものの、その構成は支離滅裂で何の脈絡もなく場面は展開する。映画の中で歌われている歌が耳に馴染みよく時々は映像とシンクロして浮かれた気持ちにはなるのだが、作品としての統一感はまったくなく単発に終わっている。せっかく中国からチャン・ツィイーを呼んでいるにもかかわらず、彼女の魅力もまったく引き出せていない。ここでのチャンの扱いは単なるかわいいお姫様以外の何者でもない。彼女の中国的な優雅さを持った所作や舞をどうしてもっと生かさなかったのだろう。


スタジオのセットから屋外ロケ、さらに安っぽいCG合成と、鈴木清順のイマジネーションは果てしなく膨らみ続ける。それはもはや老人の妄想としか言いようのない説明不能のヴィジョン。観客に理解してもらおうという媚びた意図がまったくなく、ただ自分が撮りたいだけの映像を追求する。それを許される映画監督というのはある意味すごい。この作品もサブカル系の人間には一部支持されるだろうが、まず一般ウケはしないだろう。


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