こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

戦国自衛隊1549

otello2005-06-17

戦国自衛隊1549

ポイント ★★
DATE 05/6/11
THEATER 渋東シネタワー
監督 手塚昌明
ナンバー 70
出演 江口洋介/鈴木京香/鹿賀丈史/北村一輝
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


元々タイムスリップというありえない設定なのだから、細かいところで辻褄を合わせる必要はない。理論的な矛盾を忘れさせてくれるような力強さやスピード感、どんな時代の人間にも共通するような感情を描けば楽しめたはず。しかし、この作品は登場人物を絞り込まなかったせいで物語が散漫になっている上、現代社会を風刺するような毒もない。せめて、自らの目標のために突き進む暴君の下で、部下や百姓が戦争に倦んでいるというような構図があればよかったのだが。


自衛隊・的場一佐の部隊が戦国時代にタイムスリップする。その的場が過去を歪めたせいで、現在の日本にひずみが生じ、歴史を修復するために新たな部隊・ロメオ隊が戦国時代に送り込まれる。そこに参加したかつての的場の部下・鹿島は変わり果てた的場の姿を見て驚く。的場は信長を名乗り、この時代で天下を取ろうという野望を抱いていた。


フツーに考えれば的場隊を救出するにしろ排除するにしろ、ロメオ隊を的場隊がタイムスリップした日よりも前に送り込んで待ち伏せさせておけば無駄な死人も出さず簡単に解決したはず。なぜ、わざわざ的場が強大な力を手にして以降の時代にロメオ隊を送り込むのだろう。しかも、ロメオ隊の隊長は早々に自爆突撃で命を落とす。こんなアホな指揮官の下ではそもそも作戦もおぼつくまい。第一、ロメオ隊に選抜されるような自衛官は特殊部隊に属するような精鋭のはず。なのに銃を撃つ姿はへっぴり腰、白兵戦で足軽には簡単にやられる始末。


結局、ロメオ隊も過去をいじりまくったにもかかわらず、歴史の修復機能のおかげで現在の世界は安泰を取り戻す。過去に大きな変化が起きれば未来に影響を及ぼすが、歴史は小さな変化は微調整するそうだ。こんな子供だましのような理論に誰が納得するのだろう。戦国時代に残してきた隊員の子孫が実は鹿島だった、などという使い古されたオチを使わなかったのはせめてもの救いだが、せめてもう少しストーリーに工夫がほしかった。


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