こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ライフ・イズ・ミラクル

otello2005-07-25

ライフ・イズ・ミラクル ZIVOT JE CUDO

ポイント ★*
DATE 05/7/19
THEATER シネスイッチ銀座
監督 エミール・クストリッツァ
ナンバー 87
出演 スラブコ・スティマチ/ナターシャ・ソラック/ヴク・コスティッチ/ヴェスナ・トリヴァリッチ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人生、思うようにはならない。ならばその流れに身を任せて生きるのが一番。今おかれている状況下で精一杯楽しみ、できることをやっていればいつか幸福がやってくる。「人間万事塞翁が馬」のような思想が映画の底には流れている。しかし、その描き方や映画の中での時間の流れとなどの演出はおよそ理解できない。コメディというほどにはユーモアがなく、散漫なエピソードは盛り上がりに欠ける。さらにしつこいくらい耳障りな音楽が追い討ちをかける。


ボスニアの田舎町に住む鉄道技師のセルビア人・ルカは家族と仲良く暮らしていた。内戦が勃発し妻はハンガリー人と駆け落ちし、息子は召集されムスリム勢力の捕虜となる。一方で村人がムスリム人看護婦・サバーハを捕らえ、息子との捕虜交換要員として身柄を預かる。ところがルカとサバーハの間に奇妙な感情が生まれる。


昨日まで隣人だった人々とある日突然殺し合いが始まる。のどかで平和だった日常に砲弾が降り注ぎ銃弾が飛び交う。この作品の舞台になった田舎町では虐殺や略奪のような悲惨なことは起きないが、それでも戦争の足音は確実に迫ってくる。そんな中でも人間の生活があり、男と女がひとつ屋根の下に暮らしていれば気持ちが通じ合う。為政者たちが始めた内戦の不条理と、そんな不条理では押さえつけることができない人間の感情と営みが延々と語られる。


この作品の主張は明白。だが、その主張をどうしてこんなにまどろっこしい語り口で描くのだろうか。セルビア兵が何度もバズーカ砲を逆に撃ったり、ストレッチャーに乗ったルカとサバーハが病院の廊下を走ったりと無駄なシーンも多い。せめてあと40分ぐらい無用なシーンをカットすれば睡魔と闘わずに済んだはず。エンドロールが終わり映画館が明るくなったときに「やっと終わった」という幸福感を味あわせるのがこの監督の演出意図だったのだろうか。


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