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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

愛についてのキンゼイ・レポート

otello2005-09-02

愛についてのキンゼイ・レポート KINSEY


ポイント ★★★*
DATE 05/8/28
THEATER ワーナーマイカル新百合ヶ丘
監督 ビル・コンドン
ナンバー 105
出演 リーアム・ニーソン/ローラ・リニー/クリス・オドネル/ジョン・リスゴー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


誰もが疑問に思いながらも他人に聞くことがはばかれるセックスの実態。自分はノーマルなのか変態なのか、現代のようにセックスについて語ることがタブー視されていた時代に、膨大な量のインタビューを集めた男の妻を愛する姿がまぶしい。そしてサンプルの数が多ければ多いほど、真実に近づくという学術調査の基本を忠実に実践する姿が感動を呼ぶ。他人のプライバシーを聞き出すという困難な作業を20年計画で成し遂げようという遠大な計画を立て、ライフワークにしたキンゼイ博士のすさまじいまでの好奇心と探究心。これこそ先駆者と呼ばれる人の執念だ。


父親の影響で性的に抑圧されてきたキンゼイは結婚を機に自分たち夫婦のセックスのあり方に疑問をもつ。セックスの悩みを持つ人がかなり多いことに気付き、セックスの真実を求めて聞き取り調査を始める。大学での講座は人気となり研究は順調に進むが、一方で道徳に反するとキンゼイの足を引っ張る者も出始める。


キンゼイが決して変人ではなく純粋に学術調査の対象としてセックスを選んだところがよい。結婚するまで処女と童貞、死ぬまでパートナーは配偶者だけという倫理観に支配されていた時代、射精が早死にすると信じられていたことがおかしい。しかし、そう信じていたキンゼイと彼の助手たちが次第にセックスの虜になっていくあたりの描き方が淡白なのが物足りない。セックスの真実に近づけば近づくほど自分もセックスのあり地獄から抜け出せなくなる、本物のキンゼイにはそんな苦悩もあったはずだ。


有名になったキンゼイは自分を抑圧した父にもインタビューを試みる。このとき初めて自分のトラウマを語った父と和解する。人間の本能を無理に押さえつけようとすると人格がゆがむ。息子に語ったことで初めて呪縛をとかれた父親を演じたジョン・リスゴーの枯れた表情が印象的だった。


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