こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チャーリーとチョコレート工場

otello2005-09-14

チャーリーとチョコレート工場 CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY


ポイント ★★★★
DATE 05/9/10
THEATER 109シネマズMM
監督 ティム・バートン
ナンバー 112
出演 ジョニー・デップ/フレディー・ハイモア/デイビッド・ケリー/ディーブ・ロイ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


物語の世界の完璧なまでまでの作りこみがこの作品に見るものを引きずり込む。ファンタージーならば特にディテールにまで細心の注意が必要だが、俳優の役作りから衣装、大道具小道具、VFXに至るまですべてが空想の世界を具象化している。まさにイマジネーションと職人芸の粋を集めた逸品、ティム・バートンにとってもジョニー・デップにとっても「シザーハンズ」以上の代表作になるだろう。


隠棲した天才チョコレート職人・ウォンカが再生した自分のチョコレート工場に5人の子供を招待すると声明、5枚しかないで工場への招待状「ゴールデンチケット」争奪戦が世界中で始まる。ウォンカの工場近くに住む貧しい一家のひとり息子・チャーリーは奇跡的に最後の1枚をゲット、祖父とともに工場に招待される。しかし、そこで待ち受けていたのは超変人のウォンカと信じられない工場内の光景だった。


チョコレートが流れる川、ナッツを割るリス、踊る小人、そしてウォンカ自身。自分を信じ、夢を信じるものだけが体現できる世界で、ウォンカは夢を共有できるのはチャーリーと確信する。最後に家族の大切さを訴え、ウォンカが父親の愛を知るというのはやや教条的だが愛というものの本質を鋭くついている。だが、自分を信じて常に前に進むという点では、チャーリーよりもむしろアメリカの空手少女のほうが魅力的だ。彼女の青い体に変えられてもより柔軟になった自分の体を誇りに思うというポジティブ思考は、悲惨な末路をたどった他の3人の姿に救いをもたらしている。


ただ、物質転送マシーンでチョコレートをモノリスに見立てたのは画竜点睛を欠くミスだ。オリジナリティに彩られた映像の中で、なぜキューブリックの世界とリンクさせる必要があったのだろう。ウォンカ自身が直方体の板チョコにインスピレーションを得たというのならわかるが、これではただの安っぽいパロディではないか。他のシーンが素晴らしかっただけに、余計に残念だ。


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