こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファンタスティック・フォー

otello2005-09-26

ファンタスティック・フォー FANTASTIC FOUR


ポイント ★★★
DATE 05/9/18
THEATER ワーナーマイカルつきみ野
監督 ティム・ストーリー
ナンバー 115
出演 ヨアン・グリフィス/ジェシカ・アルパ/クリス・エバンス/マイケル・チクリス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


期せずして超能力を手に入れたとき、人間はどういう気持ちになるか。自分の肉体の変化に苦しむ者、楽しむ者、観察する者、戸惑う者。だがそれぞれがその力を持て余し、正しい使い方がわからないままに悩む。超能力者という現実を受け入れそれを利用できる者はいいが、世間から拒絶されるという現実を受け容れなければならない者もいる。ONとOFFを使い分けられない、最初から超能力者であることを世間にカミングアウトしてしまったゆえの苦悩が目新しい。


天才科学者リードのチーム4人とスポンサーのビクターが宇宙嵐の調査中に高エネルギー波を被曝する。宇宙船のクルー全員がDNAに異常を来たし、それぞれ信じられない超能力が身についてしまう。そんな時、ニューヨークの橋の上で起きた多重自動車事故でリードのチームは一致協力して大惨事から人々を救助したことで一躍有名になってしまう。


頑強な肉体と巨大なパワーの見返りに異形の姿に変えられてしまったベンというキャラクターを配したところが、物語に奥行きを持たせている。正義感が誰よりも強く、命がけで人命救助に当たっても、その外見が醜いと決してヒーローにはなれない。周りの人間はベンの活躍に拍手を送っても、決して友人になろうとはしない。いくら「人は見かけによらない」といっても、人は外見で判断されてしまう。普段はフツーの人間で必要に応じて変身できる従来のスーパーヒーローモノとは一線を画す、容貌で苦悩する超人。しかし、最後には容姿より大切なことのために、異形で生きる決意をする。ヒーローの心のあり方と大衆心理の残酷な現実がこの映画の根幹を支える。


映画は、同じく超能力を授かりながらも自分の野望のためにその能力を使おうとするビクターとリードたち4人組の対決で幕を閉じる。むしろあっさりとした描き方で、4人がそれぞれの特技を生かしたチームプレーでビクターを倒す。動的な見せ場の連続でたたみ掛けるより、超能力者の心理をよりきめ細かく描く。ますますヒーローが闘う理由が希薄になってきている。


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