こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

理想の女(ひと)

otello2005-09-28

理想の女(ひと) A GOOD WOMAN


ポイント ★★*
DATE 05/9/20
THEATER シネスイッチ銀座
監督 マイク・バーガー
ナンバー 116
出演 ヘレン・ハント/スカーレット・ヨハンソン/トム・ウィルキンソン/マーク・アンバース
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


男から男へ渡り歩き奔放に生きる悪女と、夫だけを愛し夫にも自分だけを愛することを求める若妻。悪女は次のターゲットを若妻の夫に絞り、夫婦がバカンスを楽しむリゾート地に乗り込む。しかし、そこで繰り広げられるのは恋愛ゲームとも呼べないような稚拙な人間関係。上流階級の社交界にゆったりと流れる時間はそのまま映画にまったりとした雰囲気をかもし出すが、それは決して心地よいものではない。ゴシップしか興味を抱かない人々の平板で生活感のない日常に、少しの刺激を与える程度のスキャンダル。物語を構成する上での劇的な展開はない。


大金持ちの愛人として生きてきたアーリンはニューヨークの社交界を追われ、新たなターゲットを求めてイタリアの高級リゾート地に渡る。アーリンはメグという若い妻を持つロバートという男に早速接近、別荘と生活費をせしめる。やがて2人の仲は街じゅうの噂になり、メグの知るところとなる。


アーリンに扮したヘレン・ハントはどう見ても年をとりすぎている。男を虜にしてカネを巻き上げる悪女というには、あまりにも容貌に衰えがみえるのだ。そしてこんないわくつきの女にころっとだまされる男も男。色ボケじいさんにはこんな悪女でもありがたいのだろうが、ジジ転がしのテクニックのひとつも見せて欲しかった。


結局、アーリンは実はメグの産み母で、出産後すぐにメグを捨てた女。その秘密を武器にロバートからカネを巻き上げていたのだが、メグの純真な気持ちに触れて身を引くというあまーい結末。しかもちゃっかり新しいパトロンを見つけて。これが大恐慌の波に飲まれて破滅するアメリカ人資本家たちの最期の退屈な夏、という位置付けならば納得する。回想形式にするとか不況の足音が聞こえるようなシーンを挟むとか、何か少しでいいから工夫がほしかった。


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