こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベルベット・レイン

otello2005-10-12

ベルベット・レイン 江湖


ポイント ★★★
DATE 05/7/22
THEATER メディアボックス
監督 ウォン・ジンポー
ナンバー 89
出演 アンディ・ラウ/ジャッキー・チュン/ショーン・ユー/エディソン・チャン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


じっとりと湿度の高いスタイリッシュな映像はウォン・カーワイを思わせ、ギャングを演じる俳優たちの顔ぶれは「インファナル・アフェア」を連想する。流麗で変幻自在のカメラワークはチャレンジ精神に富み、登場人物の心理を繊細に代弁する。ただ、映像テクニックに酔うあまり展開は緩慢に陥り、無駄な描写がため息を誘う。並行する二つのエピソードが最後に交差するという仕掛けはなかなかのセンスを感じさせるのだが、もう少し編集のテクニックを洗練させれば強烈な印象を残す作品になったはずだ。


レストランで働くチンピラのイックは黒社会の暗殺者に選ばれ、親友のターボとともにターゲットを探す。一方、大物ボス・ホンの暗殺計画を知った大幹部のレフティは、暗殺計画の黒幕を始末するためにホンの組織の幹部3人を皆殺しにする計画を実行する。


愛するものがいる人間は守りに入り、失うものがない人間は常に攻撃的でいられる。だが、黒社会では男同士の分かちがたい友情が何よりも優先される。ホンのためには命を投げ出そうとするレフティと、短絡的で過激なレフティをいつもなだめ人間としての懐の大きさを示そうとするホン。一見、どちらも相手に対して腹に一物を持っていそうだが、絶対の信頼で結ばれている2人。レフティの放った処刑部隊から自分の組織の幹部を守ろうとするホンの行動が上に立つ人間の器量を示し、なんでも皆殺しにしようとするレフティの言動は彼の限界を示す。有能な幹部よりも兄弟分の契りを優先させなければならない苦悩がホンの額からにじみ出る。


映画の冒頭で若いイックは連絡にポケベルとダイヤル式電話を使い、組織の幹部は携帯で話をする。通信機器で時代の違いを表現し、それを伏線として最後に過去と現在を収斂させる巧妙さ。「インファナル・アフェア」と交錯するような俳優のタネ明かしのシーンの使い方は少々くどくしつこいが、終盤の倦怠を一気に吹き飛ばすインパクトがあった。


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