こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドミノ

otello2005-10-21

ドミノ DOMINO


ポイント ★★*
DATE 05/9/30
THEATER UIP
監督 トニー・スコット
ナンバー 120
出演 キーラ・ナイトレイ/ミッキー・ローク/エドガー・ラミレス/デルロイ・リンドー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


彩度を落とし原色を強調したフィルムはヒロインの心象風景を象徴する。それは時に激しく時にすさんでいるが、安定した守りの生活より命がけのスリルを生き抜いた短い人生を強烈に印象付ける。ヒロインは賞金稼ぎという職業を選び、銃弾と暴力のなかでタフになっていく。その過程を短いカットや少しずれたようなカメラワークでスタイリッシュに描いている。ただ、全編同じような色調が続くため単調な映像になった感は否めない。


母親の生き方や学校というものに馴染めないドミノは、ある日賞金稼ぎになる決心をする。エド、チョコという仲間と共に順調にキャリアを積んでいたが、カジノの売上を襲ったギャングを捕らえるという仕事で仲間にハメられて、カジノオーナーとギャング双方に追われるという窮地に陥る。


派手なガンアクションと同時にだましあいのゲームも演じているのだが、ドミノの記憶をたどるという構成をとっているために少しわかりづらい。場面転換も70年代に流行ったような古臭い手法だし、いちいち無意味な説明の字幕が出てきてわざわざ見づらくしている。いったいその意図はどこにあるのだろう。しかも、表現には凝っているわりには、トニー・スコットらしいノリが希薄でスピード感に欠けている。なんか、ジジイが無理に若者にウケようとして、外しているという感じを受ける。


そして、肝心の物語も一貫性に欠ける。本来賞金稼ぎの元締めが、子供の手術代欲しさに仕組んだ強盗事件なのだ。カジノの売上を強奪し無関係なギャングまで巻き込む。ドミノたちは、真相に気付いた後も落とし前をつけるどころかあくまで出し抜こうとせこい智恵を働かせ、最後にはハデに死人まで出している。要するに、ドミノたちの行動理論に共感できる余地はなく、アンチヒーローとしての魅力がないのだ。実話を元にしているそうだが、どうせ映画化するのだったら見るものがカタルシスを覚えるような脚色をするべきではないだろうか。


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