ブラザーズ・グリム THE BROTHERS GRIMM
ポイント ★★*
DATE 05/11/3
THEATER 109シネマズ港北
監督 テリー・ギリアム
ナンバー 137
出演 マット・デイモン/ヒース・レジャー/モニカ・ベルッチ/レナ・ヘディ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
変幻自在のカメラワークと映像テクニックでいきなり魔術の世界に放り込まれる。しかし、その魔女退治がグリム兄弟によるトリックを使ったペテン芝居。19世紀初頭、もはや迷信や魔法の時代は去り、科学の世紀の幕開けにふさわしいプロローグだ。なのに映画はふたりを呪術の森に引き戻す。不思議な事件を科学的アプローチで解決するのかと思いきや、勇気はあるが計画性のない行動で謎に迫るのだ。森の奥深いところでは魔術は健在なのだ。
インチキ除霊で稼いでいるウィルとジェイコブのグリム兄弟はフランス軍につかまり、ある村で起きている連続少女失踪事件を解決すれば詐欺罪を不問にするといわれドイツ田舎の深い森に赴く。事件の起きた森は木々がうごめき、その奥にある古い塔には世界一美しいといわれた姫が住んでいるといわれていた。
科学と魔法、テリー・ギリアムはどちらの世界観に重きを置いているのだろう。呪いをかけられた姫が魔法を使うことを肯定するならば、プロローグで魔法を否定する必要はあるまい。魔法を否定して科学の勝利を歌いたいのならば、村をフランス軍の侵攻から守りたいドイツのレジスタンスが伝説を利用して仕組んだトリックというぐらいのオチは用意すべきだろう。映画全体が持つ中途半端なスタンスが見終わったあと消化不良を起こさせる。
結局、グリム兄弟の活躍で姫の魔力は失われ森の呪いは解け、少女たちは無事帰還する。魔法の時代は完全に終わるのだ。だがその物語の根底に、フランス軍に占領されて踏みにじられたドイツ人の愛国心が流れていなければ、この魔女退治に意義が見出せないではないか。それとも、人間の欲望の犠牲になってきた森に宿る神秘性をもっと尊重し、森林資源を大切にしましょうというのが最大のメッセージなのだろうか。少なくとも主人公のグリム兄弟からは使命感のようなものは感じられなかった。