こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イン・ハー・シューズ

otello2005-11-23

イン・ハー・シューズ IN HER SHOES

ポイント ★★★
DATE 05/11/17
THEATER 池袋HUMAX
監督 カーティス・ハンソン
ナンバー 142
出演 キャメロン・ディアス/トニ・コレット/シャーリー・マクレーン/マーク・フォイアスタイン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ウォークインクローゼットの奥にずらりと並べられた数十足の靴。ハイヒールをはじめ、ドレスに合わせるような靴ばかり。はいてもらえる機会はほとんどなく、中にはおそらく買われてから一度も足元を飾ったことのない靴もあるだろう。それでもはいてもらう時をじっと待つ。似合わない靴、すぐ壊れる靴、履き心地の悪い靴、そんなものはすぐに捨てて、自分にあった靴を探す。それはこの映画の2人のヒロインにとって、人生の扉。新たな一歩を踏み出す時には新しい靴が必要なのだ。


プータローのマギーは継母のいる実家を追い出され、弁護士の姉・ローズのもとに転がり込む。しかし、ローズの男を寝取ったため追い出され、偶然存在を知ったフロリダの祖母・エラのもとへ向かう。マギーも弁護士事務所をやめたところ、フロリダに呼ばれる。


28歳というもはや若いといえないかわいいだけの何の特技もない女の実態を、C・ディアスはリアルに演じている。若さがいつまでも続かないことぐらいわかっている。それでもなかなか自分に合う生き方が見つからない。しかし、それを他人に指摘されると反発したくなる。姉のほうも仕事はうまく行っていても私生活は満たされない。どんな人生にもどこかに不満があり決して満たされることはない。何ゆえ女はわざわざ歩きにくい靴を履くのか。歩かなくても済むようにクルマと男を自由にしたい。その気持ちをクローゼットに並べた靴で見事に表現していた。


そして何より姉妹の絆の強さ。自分とは正反対の行き方をする馬鹿な妹だけれど、やっぱり見捨てられない。ローズにとってマギーは自分ができなかったことをしてくれる分身のようなもの。マギーにとっては口うるさいけれど自分を受け入れてくれる唯一の存在。そして、マギーはエラと暮らし始め、マギーは結婚してそれぞれの道を歩み始める。この新たな門出も祖母のハイヒールに思いを託すだけで、ことさら感動を強調することなくさらりと描く。そんなライトで身近な感覚が後味の良い作品に仕上げている。


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