こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フォー・ブラザーズ

otello2005-11-28

フォー・ブラザーズ FOUR BROTHERS

ポイント ★*
DATE 05/9/29
THEATER UIP
監督 ジョン・シングルトン
ナンバー 119
出演 マーク・ウォールバーグ/タイリース・ギブソン/アンドレ・ベンジャミン/ギャレット・ヘドランド
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


文明社会とは思えないような銃の乱射とカーチェイス。銃弾には銃弾、血には血という考え方がこの映画を支配し、人間の命に対する尊厳は微塵もない。挙句の果てには住宅地で自動小銃を乱射し、家一軒を破壊する。あまりにも短絡的に暴力に訴える登場人物たちにはもはや嫌悪感すら覚える。いくら恩義ある人の敵討ちとはいえ、こんなに人を殺してもいいものだろうか。ここまでやりすぎるとミステリーとしての味わいも半減し、ただ銃社会を助長するような無法者たちをヒーローとして扱う映像にうんざりするだけだ。


エブリンという老女が強盗に射殺され、彼女の4人の養子が復讐に立ち上がる。目撃者を探し実行犯を始末していくうちに、事件の背後にギャングが暗躍し、都市開発をめぐって彼女と対立していたことを突き止める。


いくら犯罪が横行するデトロイトとはいえ、これではまるで無政府状態のイラクやアフガンと変わらないではないか。主人公は白昼と頃かまわず銃をぶっ放し、情報を聞き出すために暴力をふるう。警察はまったく無力で何の捜査もしようとせず、悪党に買収されている。西部劇や架空の街が舞台ならそういう設定もアリだと思うが、実在の街の現代劇ではあまりにもリアリティに欠ける。しかも4兄弟は密かに動くのではなく復讐の相手を探し回る。これではマフィアのボスに対策を練る時間を与えているだけではないか。


手のつけられないワルだった4兄弟がまがりなりにもエブリンのおかげでまっとうに生きることを学んだのなら、復讐するにしても暴力に訴えるのではなく頭脳プレーで相手を破滅させるぐらいの智恵を絞るべきだろう。最後になってやっとマフィアのボスを罠にはめることを思いつくが、そこでも結局殺すことでしか解決しようとする。なんか、人間の理性というものをまったく感じない作品だった。


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