こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Mr.&Mrs.スミス

otello2005-12-05

Mr.&Mrs.スミス Mr.&Mrs.SMITH


ポイント ★★★
DATE 05/12/2
THEATER 新宿アカデミー
監督 ダグ・リーマン
ナンバー 149
出演 ブラッド・ピット/アンジェリーナ・ジョリー/ヴィンス・ヴォーン/アダム・ブロディ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ブラピとアンジェリーナというハリウッドを代表する大スター同士の共演は、二人のキャラクターから出演シーン数まで細かいところまで同格に扱うというきわめてマーケティング主体の顔見世映画になった。はたして二人の息はピッタリ合っていて、アクションの派手な見せ場もコメディの絶妙の掛け合いも上質のエンタテインメントとして昇華されている。ただ、作品全体にゴージャス感が乏しく、殺人のミッションも結婚生活もすべてがゲームという軽さだけが印象に残る。


ジョンとジェーンは結婚して6年、二人とも腕利きの殺し屋だがお互いに正体を偽っている。そんな時、それぞれの組織がお互いを殺しあうように仕向けた指令を出し、ジョンとジェーンは互いに正体をさらして殺しあう。


前半は秘密を胸にした夫婦の心理的な駆け引き、後半は派手なカーチェイスと銃撃戦。娯楽作品としての定石を丁寧になぞり、それなりに楽しませてくれる。しかし、このまったくリアリティのない設定が映画をどうしようもなく軽薄なものにしている。そこには緊張感も切迫感もない。ジョンとジェーン、二人の対決は引き分けに終わるのは目に見えているし、二人が手を組めば無敵になるという展開にもなんのひねりもない。殺しのスペシャリストとしての特別なワザを見せるとかミステリー的な発想があれば救いがあるのだが、あまりにも物語が単調で結末が読めてしまう。


だからこそ二人がセラピストにカウンセリングするというシーンを冒頭に挿入し、夫婦の危機を乗り越えるために何が必要かを示唆するのだ。子供なしの共働き、お互いに仕事と家庭では別の顔を見せる。経済的には自立しているために愛が冷めれば夫婦でいる必要がない。そんな夫婦がヨリを戻すには共通の敵が必要で、協力して同じ目標のために戦えば愛もまたよみがえる。単純な構成は倦怠期の夫婦に送る刺激的な復縁レシピとしては機能しているが、映像をスタイリッシュにするくらいの工夫は欲しかった。


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