こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

非日常的な彼女

otello2005-12-18

[[]]非日常的な彼女


ポイント ★★
DATE 05/10/21
THEATER メディアボックス
監督 イ・サンフン
ナンバー 131
出演 チョン・ウンイン/ユ・スンホ/チェ・ミンソ/イム・ホ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


公衆浴場で背中をアカすりしあう父と息子。親子の愛情はこうやって育っていくのだろう。背負った子の体重がいつのまにか重くなっていることを感じるのも父親としての喜び。ひとつの鍋からラーメンをすすり、枕を並べて眠る。経済的には豊かではなくとも満ち足りた生活を送る父子の姿がほほえましい。なのに、なぜかこの作品、日本では子を捨てた母親役・チェ・ミンソが主役扱いになっていいる。


ショークラブのMC・チョルスは息子のチョンウォンと二人暮し。チョンウォンの母・エランは出産当時高校生だったためチョンウォンを生んですぐに米国留学、チョルス男手ひとつでチョンウォンを育ててきた。ある日、下着会社の重役として帰国したエランはチョルスとチョンウォンの存在を知り、チョンウォンを引き取りたいと願う。


コメディタッチで描きながらも、父子の愛情の強さと母親の子を思う気持ちを絡めた人情劇にしようという狙いは理解できる。父が時に卑屈になりプライドを捨ててでもながらも自分との生活を守ろうとしてくれている姿を見て、チョンウォンがさらに愛情を感じるという図式はほろりとさせられる。だがそこにエランという身勝手な母親が絡んでくると急にトーンダウン。どんな事情があったにせよ、生んだ瞬間にわが子を見捨てたくせに母親面するのは許せない。大体、父子の絆の強さを前半でさんざん描けば、どう考えても母親は悪者扱いしなければならないことぐらい、脚本家は気付かないのだろうか。


結局、米国に戻ろうとするエランが、リンチされ瀕死の重傷を負ったチョルスの元に駆けつけ2人は愛を復活させるという毒にも薬にもならないようなハッピーエンド。なぜもっとチョンウォンに母親が必要な理由やエランの子を思う気持ちを描かないのだろうか。チョンウォン役のユ・スンホが母の不在を寂しく思いながらも父に心配をかけまいと健気に生きる少年の役を熱演しているだけに、残念だった。


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