こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

秘密のかけら

otello2006-01-02

秘密のかけら WHERE THE TRUTH LIES


ポイント ★★*
DATE 05/10/25
THEATER CINEMART
監督 アトム・エゴヤン
ナンバー 133
出演 ケビン・ベーコン/コリン・ファース/アリソン・ローマン/レイチェル・ブランチャード
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


真相が闇に葬られたままの変死事件。15年も経った後で真実をほじくり出すことができるだろうか。もちろん当事者はまだ生きている。証言を集めるうちに当事者同士の駆け引きで、微妙にブレが出てくる。その矛盾を突くことで真実に迫ろうとする記者。しかし、その真実自体が今更暴いたところで「不正を正す」というものではなく、単なる上昇志向の強い記者の自尊心を満たすレベル。スキャンダルではあるが陰謀というほどのものではなく映画の題材としては地味だ。


50年代に大人気を誇ったラリーとヴィンスのコンビは、興行先のホテルで女性の変死体がが見つかったことから解散する。15年後、彼らのファンだったカレンという女性記者が事件の真相を探るべく引退生活を送っているヴィンスにインタビューを申し込む。その一方、カレンは偶然飛行機内で一緒になったラリーに身分を偽って近づき、一夜を共にする。


カレンがひとつひとつ事実を調べ、真実に迫っていくという過程を経ているのなら説得力が出ただろう。しかし、ヴィンスにはカネを払ってインタビューを申し込んでいるだけだし、なぜかラリーから当時の2人の様子を書き記した原稿が送られてくる。彼女が証言を集めたといっても変死体が発見されたときに現場にいた警官と被害者の母親だけ。足と根性で集めた膨大なデータの中から真実にたどり着くというプロセスが省かれている上にラリーとまで寝てしまうため、お手軽な取材をしているとしか思えない。


結局、カレンの動機は、彼女が子供の頃テレビ番組本番中ラリーに声をかけられたことから彼らのファンになったということ。変死体となって発見された女学生はラリーからカネをゆすっていたため執事が処理したということらしい。その間ヴィンスは自ら命を絶つ。子供の頃のアイドルが変わり果てた姿になっているのを見るのは忍びないが、結局カレンのしたことは何の意味があったのだろうか。


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