こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

天使

天使


ポイント ★★
DATE 05/12/8
THEATER 東芝エンタテインメント
監督 宮坂まゆみ
ナンバー 152
出演 深田恭子/永作博美/永瀬正敏/内田朝陽
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ただそばにいてくれるだけで少し勇気がわいてくる。人生の意味を見つけられない若者、心に傷を負った女子中学生、親にかまってもらえない寂しさを抱えた幼稚園児。彼らにだけ天使の姿は見える。天使が自分の愛を注ぐ人間を選ぶのに明確な基準はない。天使は気まぐれでいつ現れるかわからない。人間と天使の係わり合いを通じて、誰にでも幸せになるチャンスはあることを言いたいのだろうが、逆にその話の広がりが物語を散漫にしてしまった。


コンビニの店員の前に突然現れた天使は、ふといなくなったと思ったら、父と父の恋人の間でちいさな心を痛める幼児のところへ行っり、学校でいじめられて自殺を決意した女子中学生の命を救ったり。気まぐれに街をさまよっては、人々の心に小さな温もりを残していく。


天使が現れるときの視覚・音響効果がまるで子供向けアニメのようだ。メルヘンチックを演出しようという意図は理解できるのだが、見ているほうが気恥ずかしくなる。天使は白いドレスに身を包み、その羽は閉じている時も何かを訴えるようにうごめいている。この天使は生まれたばかりで人間界のことだけでなく自分のことも何も知らないのだろう。だから天使の行動は予測不能で何を考えているかわからない。教訓めいたところがないのは好感が持てるが、物語も天使の性格同様、脈絡なく進行する。料理好き姉妹のエピソードなどまったく不要で、口うるさいおばさんが雰囲気をぶち壊している。


物語を紡ぐ過程で、天使と人間のかかわりをもう少し強くすべきだし、天使も人間を少しだけでも幸せにすることで精神的に成長させるべきだろう。現れる前と後、天使が見えた人間の環境は確かに好転した。それは気持ちのあり方を少し変えただけで「占い師にいいことを言われた」程度のもの。いかにも「天使です」と言いたげな星のきらめきを撒き散らしながら登場する天使にしては肩透かしだ。ベルリンの天使のように控えめである必要はないが、中途半端な天使の定義が映画自体も中途半端な印象にしてしまった。


↓メルマガ登録はこちらから↓