こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オリバー・ツイスト 

otello2006-02-01

オリバー・ツイスト OLVER TWIST


ポイント ★★★*
DATE 06/1/28
THEATER 109シネマズ木場
監督 ロマン・ポランスキー
ナンバー 16
出演 バーニー・クラーク/ベン・キングスレー/ジェイミー・フォアマンハリー・イーデン/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


細密に再現された19世紀のロンドンを舞台に繰り広げられる波乱万丈のストーリーは、一時も飽きさせない。身寄りがなく、大人たちからは冷たく扱われ、やっとやさしい人々と出あったっと思ったら、とんでもない悪人。そんな劣悪な環境の中でも決して自分を失うことなく力強く生きる9歳の少年を主人公に、人間の大いなる善意を高らかに謳いあげる。ポランスキー監督は時代がかった教条主義を極力抑えて、あくまで少年の視線で大人たちの身勝手を告発する。


孤児のオリバーは監獄のような貧窮院から葬儀屋に奉公に出されるがロンドンに逃げ出す。行き倒れているとドジャーという少年に声をかけられスリ団の仲間に入れられる。ある日、仲間がしくじったところに出くわしたオリバーは誤認逮捕されるが、容疑が晴れた後、金持ちに引き取られる。


スリ団の頭目・フェイギンが印象的だ。子供たちにスリを働かせて上前をはねるちんけな悪党なのに、孤児を労働力としか考えない悪辣な貧窮院の大人たちよりよほど人間味がある。すくなくとも子供たちにきちんとした食事を与えているし、せこいけれど面倒見がよく、暴力よりも話し合いを好む。見掛けは怪異でも、根っからの悪党ではないキャラクターをベン・キングスレーは好演している。


結局、オリバーは再び悪事の片棒を担がされるが、すんでのところで恩を仇で返さずに済む。ただ、悲惨な状況に流されず悪の道に染まらなかったオリバーの精神と言葉遣いから来る礼儀正しさには、母親の教育が色濃く影を落としているはずのに、母親のエピソードがまったく出てこないのは不自然。おそらくカットされたのだろうが、オリバーの強い心に説得力を持たせるためにもひとつくらい回想シーンがあってもよかったのではないだろうか。彼の人格形成に影響を与えた母親はどんな人だったのか、そこがいちばん気になった。


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