こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

PROMISE

otello2006-02-15

PROMISE 無極

ポイント ★*
DATE 06/2/11
THEATER 109シネマズ木場
監督 チェン・カイコー
ナンバー 22
出演 真田広之/チャン・ドンゴン/セシリア・チャン/ニコラス・ツェー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


目もくらむような鮮やかな色彩、ワイヤーを使った超重力格闘シーンとそれをフィルムにとらえる変幻自在のカメラワーク、そしてCG。しかし、それらほとんどのシーンがチェン・カイコー監督の独善に終わっている。監督自身が「誰も見たことがない映像」を目指していたのは理解できるが、監督が見せたい映像があまりにも観客の視点から乖離している。特にCGのできばえが恐ろしく古臭くて安っぽい。10年前の映画でももう少し丁寧な仕事をしていたはず。結局、監督の自己満足だけが前面に突出した稚拙な作品になってしまった。


孤児の傾城は、女神に愛と引き換えに豊かな生活を保証され、美しい王妃になる。そこに無敵の大将軍・光明、奴隷の昆崙、天下を狙う公爵・無歓の3人が王亡きあとの傾城をめぐって壮絶な愛のバトルを繰り広げる。


中国の大地を舞台にした壮大な伝奇を映画化しようとした意気込みは理解できるのだが、物語の骨格となる世界観の枠組みがきちんとできていない。たとえば、奴隷はなぜ四つばいで歩くのか、王城と雪国や光明の庵との空間的距離、大将軍と公爵の人間関係など。また、愛をあきらめることで世界を手に入れるが、本当に愛した人間が現れたときには破滅が待っているという傾城の物語を中心に据えるべきなのに、大将軍と女神の密約や奴隷と刺客のルーツを探るタイムトリップなど挿入するせいで一貫性を欠いてしまった。いくら神仙の類が跳梁跋扈するファンタジーとはいえ、何でもありになってしまってはおもちゃ箱をひっくり返しただけのカオスが待っているだけだ。


チャン・イーモウの時代劇とチャウ・シンチーのCGアクションを足した映画を期待していたが、両者の長所ではなく短所を寄せ集めたようなできばえ。外見は立派でも中身はスカスカですぐに破綻してしまう、耐震強度偽装マンションのような作品だった。


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