ジャーヘッド JARHEAD
ポイント ★★*
DATE 06/1/27
THEATER UIP
監督 サム・メンデス
ナンバー 15
出演 ジェイク・ギレンホール/ピーター・サースガード/ルーカス・ブラック/ジェイミー・フォックス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
戦場に来たのに戦闘がなく、ひたすら訓練と待機の日々。海兵隊に志願して地獄の新兵訓練を乗り越え、狙撃手という部隊内のエリートとして選抜されたのに、その腕の見せ所はいっこうにやってこない。実戦へ向けて昂ぶる気持ちとおびえる気持ち、厭戦と好戦、前線の緊張と弛緩、そういったものが複雑に入り混じった実戦経験のない兵士たちの不安定な心理がリアルに描かれている。圧倒的な近代装備でイラク軍を蹴散らした湾岸戦争では、狙撃の腕を見せるチャンスはない。そんな不条理な現実を乾いたタッチで描いている。
大学進学より海兵隊を選んだスオフォードは狙撃手に抜擢される。やがてイラクがクウェートに侵攻、サウジに派遣される。しかし、状況は膠着状態で延々と待機する日々が続き、スオフォードや同胞たちのイライラは極限にまで達していく。
第二次大戦のときのような崇高な使命感はなく、ベトナム戦争のときのような泥沼の戦況にあえいでいるわけでもない。ただ、家族のしがらみから抜け出したくて父も祖父も従軍経験があるというだけで志願したスオフォード。もともと強烈な向上心があるわけでもなく、海兵隊は現実逃避の場でしかない。他の兵卒も志願の理由は似たようなもの。祖国や家族を敵から守るなどという精神は微塵もない。そのぬるさが全編を覆い、米軍が世界中で直面する戦争・紛争のばかばかしさを告発していく。
湾岸戦争従軍者の実録が原作になっているということだ。しかし、戦争・戦場を舞台にしながら、これほどまで山場のない物語をわざわざ映画化する必要があったのだろうか。反戦を唱えるわけでもなく、米国の正義を訴えるわけでもない。ただ、だらだらと実戦待機の日々を描き、待望に実戦でも結局1発も撃たなかった。戦場においてなすべきことが見つからなかった中途半端な主人公の思想同様、何をテーマにして何を訴えたかったのか、最後まではっきりしなかった。