こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シムソンズ

otello2006-02-27

シムソンズ


ポイント ★★★*
DATE 06/2/22
THEATER 渋谷シネラセット
監督 佐藤祐市
ナンバー 28
出演 加藤ローサ/藤井美菜/高橋真唯/星井七瀬
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


わかりやすい説明、大げさな演技、少女マンガのような展開。女子高生たちの描写はありきたりでむしろ幼稚ですらある。それでも、現在にも未来にも大きな夢を見出せない少女たちが自分たちの意志で立ち上がり、自分たちの力で走り出す姿はすがすがしい。そう、人生は自分から行動しないと変わっていかないのだ。そして何かを始めるにはまず仲間を集めなければならないということを教えてくれる。


進路に悩む高三の和子はふとしたきっかけでカーリングを始めることになる。親友の史江、クラスメートの菜摘、経験者の美希の4人でシムソンズというチームを組むが初戦は惨敗。とにかく1点だけでも取ろうとコーチを頼り、練習に明け暮れる。だが美希だけは他の仲間に心を開かず、チームは崩壊の危機を迎える。


漫然と生きてきた高校生がひとつの目標に向かって努力する過程で、友情を育て達成感を得るという手垢のついたパターンなのだが、加藤ローサ扮する和子の底抜けの楽観性が救いをもたらしている。10年後の自分が想像できてしまうという田舎町の若者の閉塞感も、彼女にとっては新たな未来への原動力。カーリングというマイナースポーツの解説も適宜で映画のテンポの妨げになることはない。なにより4人が真剣にカーリングに取り組むことを楽しんでいる姿が輝いている。


和子がカーリングを始める理由も、夏から秋の短期間の特訓だけで初心者がこれだけ勝てるようになるのもあまりにもリアリティに欠けるし、大会決勝にコーチが不在というハプニングへの対処も予定調和的。映画のアイデアとしてはいまさらという感じなのだが、4人のヒロインのはちきれんばかりの若さと前向きな姿勢、なにより仲間を信じてすべてを任せるという一体感が見るものにも伝わってくる。それは観客も巻き込んだ清冽な息吹となり、スクリーンからあふれ出すのだ。


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