こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

県庁の星

otello2006-03-01

県庁の星


ポイント ★★*
DATE 06/2/27
THEATER 池袋シネマサンシャイン
監督 西谷弘
ナンバー 28
出演 織田裕二/柴咲コウ/石坂浩二/井川比佐志
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


もともとライトタッチの原作をさらに戯画化しているので人物像は薄っぺら、会話にもリアリティは乏しい。それでも物語のテンポはよいので途中までは退屈しない。この「スーパーの女」と「プロジェクトX」をミックスさせたような展開は、シリアスにもコメディにもなり得るのだが、結局どちらにも足場を固められず中途半端なスタンスに終わっている。また、蛇足のような後日談がやたら長く、作品をしまりのないものにしている。


県庁に勤めるキャリア官僚・野村は野心的で仕事もできる。ある日、官民交流のためにはやらないスーパーに出向するが、役所とはまったく違う仕事の進め方に戸惑い、指導係の二宮と事あるごとに対立する。そして野村の指導の下、高級弁当を商品化するがまったく売れず、野村は孤立する。


県庁の常識はスーパーの非常識でスーパーの常識は県庁の非常識。まったく価値観が違うものを融合させるには思想や言葉ではなく、まず行動すること。そのことを野村は身をもって覚えていく。自分は頭脳でスーパーの店員など手足に過ぎないと思っている野村の鼻がくじかれる過程が心地よい。ただ、このスーパーがあまりにも非効率すぎる上、従業員たちに緊張感がない。だからこそ客が少ないのだろうが、ここまで無責任な店長や頑固な古参従業員はいないだろう。ステレオタイプとわかっていても、コメディと割り切っていない曖昧さが理解の邪魔をする。


仕事はそつなくこなしプライドも高い。コスト意識などないけれど縄張り意識は強い。織田裕二が演じる県庁職員はの絵に描いたようなエリート官僚。スーパーの再建を通して野村自身もまた成長していくというのが物語の主眼だが、そこに共感を得られないのはやはりエリート意識が抜けきっていないからだろう。ネクタイをはずし、力仕事も一応はするようになる。しかし、本当にパートの肉体労働者のレベルにまで最後まで降りてこない野村の姿からはやはり感動は得られなかった。


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