こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

SPL 狼よ静かに死ね

otello2006-03-12

SPL 狼よ静かに死ね 殺破狼



ポイント ★★★
DATE 06/3/3
THEATER 新宿オスカー
監督 ウィルソン・イップ
ナンバー 32
出演 ドニー・イェン/サモ・ハン/サイモン・ヤム/ウー・ジン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


燃えよドラゴン」でブルース・リーに腕をきめられたサモ・ハンが、年齢を重ね体重もかなり増えたが長髪にヒゲを蓄えて圧倒的な存在感をかもし出す。ギャングのボスとして平気で人殺しもするが、一方で妻と生まれたばかりの子供には目がない人間的な一面も見せる。そしてクライマックスではその巨体に似合わぬ体のキレで格闘シーンをこなす。主人公である警察官より敵役のこの男の物語のほうにむしろ興味を惹かれるくらい、魅力的なキャラク
ターだった。


ギャングのボス・ポーを追っていたチャン捜査官は、引退前にポーの組織を壊滅させようと殺人事件現場を撮ったビデオを偽造し、ポーを逮捕する。しかし、偽造がばれポーは釈放、ポーが報復にチャンの部下たちを殺していく。並行して新任のマー捜査官は単身事件の真相に迫っていく。


犯罪組織対警察の戦いなのに、同格と認めた相手にはお互いに格闘家同士のような敬意を持って戦うというバカげた設定だから、格闘映画として楽しめる。特にポー配下の暗殺者のナイフ捌きは秀逸。斬り、刺し、えぐり、投げる。そして狭い路地で特殊警棒を持ったマー捜査官との一騎打ちはスピード感にあふれた最大の見せ場になっている。さらにマーとポーとの素手対決。体術の限りを尽くして肉体をぶつけ合うシーンは重量感があふれ、その痛みがスクリーンを通して伝わってくる。


しかし、ストーリーはかなり無理がある上に無駄なエピソードも多い。チャン捜査官はポー逮捕のためには何をしてもかまわないと思っているし、容疑者を射殺することにまったく痛痒を感じない。こんな捜査の仕方ならせっかくポーを逮捕しても、また証拠不十分で釈放されるのが関の山だ。そのあたり警察官はあくまで合法的な捜査をしながら何とかポーを追い詰めていくという緻密な設定にしていれば、ドラマ部分にも厚みが出て、単なるアクション映画の域を出た広がりを持つことができたはずだ。


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