こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

大統領のカウントダウン

otello2006-04-09

大統領のカウントダウン


ポイント ★★★*
DATE 06/4/6
THEATER シネマミラノ
監督 エヴゲニー・ラヴレンティエフ
ナンバー 51
出演 アレクセイ・マカロフ/ルイーズ・ロンバード/ヴァチェスラフ・ラズベガーエフ/ジョン・エイモス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


圧倒的な人数と銃器をもつ敵に対し、神出鬼没、孤独な戦いを挑む不屈の魂を持った男。家族を人質にとられながらも、相手の裏をかき一人また一人とテロリストたちを倒していく主人公の姿は「ダイ・ハード」を髣髴させる。アクションの質もキャラクターもカメラワークも徹底的に米国風を研究したのだろう、セリフがもしロシア語ではなく英語に吹きかえられていたらハリウッド映画として通用するレベルにまで仕上がっている。


チェチェン独立軍とアラブ系テロリストが組んで、モスクワで興行中のサーカスを乗っ取り、2000人の観客を人質に取る。そこに元ロシア特殊部隊隊長・スモーリンが単身乗り込むと、アラブ系テロリストはサーカスを放棄、別働隊が強奪したプルトニウムでローマサミットを標的にする。


大掛かりな爆発や破壊といった派手さに頼ることなく、あくまでスモーリンが自らの肉体と銃だけで戦う姿勢で等身大のヒーローを演じる。正確に眉間を撃ち抜く射撃の腕前と素手で倒す体術は鍛え上げた肉体のみが可能にする抜群のリアリティ。さらに娘のために体を張り、絶体絶命のピンチにも顔色一つ変えず危機を切り抜ける。父親としての愛や自分の名誉を回復させたいという人間的な動機を持ちながらも、主人公が感情を殺して殺人マシーンになりきるのはいかにもロシア的。表情を変えない鋼鉄の意志を持った男をアレクセイ・マカロフは好演している。


ただ、テレビクルーが犯行を実況中継したり、人質の爆殺を図ったり、犯人側の逃亡用の飛行機に主人公が乗り込んだりと、「ダイ・ハード」シリーズからのアイデア盗用が目立つ。「2」の悪役、ジョン・エイモスも出ていたし。唯一ブルートゥースという新しいシステムを取り入れ、暗号を遠隔で解読するというのは目新しかった。ハリウッド的なものをまねするのもある程度は仕方ないが、ロシア的な発想とか感情を前面に出すともう少し面白くなったはずだ。


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