こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

LIMIT OF LOVE 海猿

otello2006-05-12

LIMIT OF LOVE 海猿

ポイント ★★★
DATE 06/5/6
THEATER 109シネマズ木場
監督 羽住英一郎
ナンバー 67
出演 伊藤英明/加藤あい/時任三郎/佐藤隆太
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


海難事故の原因などどうでもいい。目の前でフェリーが沈没しかかり、そこに多数の乗員乗客がいるならばまず救助に向かうのが救難隊員。物語の導入部からそのあたりのメンタリティをテンポよく描き、いきなり観客を事故の現場に引きずり込む。浸水し炎上しながら徐々に沈んでいく船の中で、伊藤英明扮する主人公が声高に愛と自己犠牲を叫び続けるのには辟易するが、それでもあそこまで突き抜けてまっすぐな気持ちを訴え続けると、映画全体を底上げする不思議なパワーとして機能してくる。


鹿児島沖で船舶の衝突事故が発生、フェリーが大破する。海上保安庁救難隊の仙崎が現場に駆けつけ乗員乗客の避難誘導にあたっていると、そこに喧嘩別れしたばかりの恋人がいた。やがて船内でガソリンが引火し、仙崎はバディの吉岡と2人の民間人と共に密室に閉じ込められる。


沈みゆくフェリーを遠景でとらえたCGのできばえが見事だ。爆発炎上し、船体が断末魔の悲鳴を上げる様子はニュース映像のようなリアリティ。実写の空と海を背景に合成したものだろうがチャチな不自然さがまったくなく、船内で繰り広げられる仙崎ら4人のサバイバルに時間との闘いという切迫した危機感を与えている。水と炎と水密戸に密閉された空間の中で、もう一度空が見たいという仙崎らの願いに墨を塗るように船の裂け目から噴出する巨大な黒煙が印象的だ。


仙崎は次から次へと襲いかかる絶望的な状況にも決して諦めない驚異的な精神力で切り抜け、ひとりの脱落者も出さずに生還するというのはお約束どおり。しかし、もはやこれまでという状況を何度も陥り、そのたびに奇跡を起こしてしまっては興ざめだ。一応、冒頭で人一人を救えなかったことを伏線を張っているが、仙崎の熱い思いと強靭な肉体だけではどうにもならないこともあるという現実をきちんと描いたほうが広く共感を得たはずだ。前作以上のヒットを義務付けられた以上、ハッピーエンドを望む観客に媚びた展開を用意するのは当然なのだろうが。。。


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