こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロシアン・ドールズ

otello2006-05-26

ロシアン・ドールズ LES POUPEES RUSSES

ポイント ★★
DATE 06/4/27
THEATER 角川ヘラルド
監督 セドリック・クラピッシュ
ナンバー 63
出演 ロマン・デュリス/オドレイ・トトゥ/セシル・ド・フランス/ケリー・ライリー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人生は永遠に輝き未来は自分を祝福してくれると無条件に信じることができた学生時代から5年、世間は厳しく現実は思うようにいかない。それでも確実に時は流れ、いつかは夢が覚めることを自覚する30歳という年齢。不安と焦りが日増しに大きくなる中でついつい逃げ場を作ってしまう主人公は、すでに向上心は低く人間としての成長は望めない。愛、仕事、家族、友人・・・生きていく上の諸問題に対して別に苦悩する必要はないが、どれひとつとして真剣に取り組まないようでは薄っぺらな人間としか映らない。


スパニッシュ・アパートメント」から戻って5年、グザヴィエは作家というよりケチな売文家として生計を立てていた。恋人はいないけれど相変わらず女出入りだけは激しい。ある日、メロドラマの脚本を英語で書くためにロンドンに渡り、スペイン時代の友人・ウェンディと共同執筆することになる。


目標が何一つ達成されず日々の生活に終われるうちに流されてしまい、「このままでいいのか」という思いだけが募る。それでも「何とかしよう」と思う前にナンパしてしまうというグザヴィエ。いくらラブストーリーを書くために恋愛を体験しなければならにといっても、彼の行動からは魂と魂がぶつかり合うような本当の恋愛には到達できないだろう。ロシア人バレリーナに恋をした男が、彼女に気持ちを伝えるために1年間ロシア語を必死で学んだというエピソードのほうが、よほど愛の本質を美しくとらえている。


結局グザヴィエはウェンディと結ばれるのだが、そこでもまた浮気をして恋を壊してしまう。人間の弱い部分も等身大に描いているといっても、ここまでくるともはやグザヴィエには嫌悪感しか覚えない。二股かけるのもいいが、三十男ならせめて本命の女に気づかれないくらいの分別を持つべき。しかもラストではまたウェンディとヨリを戻している。こんな男にここまで甘い結末を用意する必要はないはずだ。


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