インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ〜
ポイント ★★★
DATE 06/4/13
THEATER 角川ヘラルド
監督 三池崇史
ナンバー 55
出演 工藤夕貴/ビリー・ドラゴ/未知枝/根岸季衣
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
指と爪の間に太い針を刺す痛みはスクリーンを越えて伝わってくる。さらに歯茎にも同じ針を刺し、痛みに悶絶する女の絶叫がこだまする。思わず目を背けたくなる拷問シーンは悪趣味の域にまで達していて、不愉快極まりない。しかし、その後に繰り広げられる醜い女郎の問わず語りは、山深い寒村の風景と呪われた血に彩られた物語がしっとりとした質感のフィルムに収められ、思わず身を乗り出しそうになる。残酷と恐怖が耽美主義の元に融合し、見事なまでの相乗効果を生んでいる。
アメリカ人ジャーナリスト・クリスはかつて将来を誓い合った女郎・小桃を探して小さな島を訪れる。そこで買った顔の右半分が引きつった恐ろしい形相の女から、小桃の消息を聞かされる。小桃は置屋の女将の指輪を盗んだという嫌疑をかけられ、拷問された上に首吊り自殺をしたという。
異形に生まれ差別に苦しみながら生きざるを得なかった女の身の上話が切なくも恐ろしい。生きているこの世こそが彼女にとっての地獄、その地獄で恋人の迎えをひたすら信じて待つ小桃は、女にとって自分に冷たく当たる他の女郎より許せない存在。世の中を憎んでいる人間に情けをかけるのはアダになる。屈折し、もはやどうしようもないほどゆがんでしまった女の情念を工藤夕貴はリアルな表情で演じる。
結局、この女は双子で、彼女の姉が右側頭部に寄生している。しかも両親は実の兄妹で、女はさらに父に犯されるという強烈な近親相姦まで描かれる。中絶した胎児の死体を川に捨てることが日常となり、その行為に何の思い入れもなくなってしまうところが、本当に怖かった。