こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

DEATH TRANCE

otello2006-06-06

DEATH TRANCE

ポイント ★★
DATE 06/4/5
THEATER シネマート
監督 下村勇二
ナンバー 50
出演 坂口拓/須賀貴匡/剣太郎セガール/竹内ゆう紀
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


格闘を主な見せ場とするアクションは、もはや目新しいものは出尽くしたのだろう。剣、銃、素手、あらゆるものを武器に戦う登場人物たちを見ていても、目を見張ったのはカポエラー使いの足技だけ。その一方、彩度を落としたスタイリッシュな映像とカメラワークは斬新でスピード感にあふれる。しかし、そこで描かれている物語は薄っぺらで、格闘シーンを表現するためだけに考えられただけの安易なもの。映画の精神性を仏典に求めるなど、もう少し脚本家に知識を求める姿勢があれば作品に東洋哲学的な奥行きが出たはずだ。


山深い寺で僧兵たちに守られていた棺が一人の男に奪われる。その棺は万能の力を持つといわれ、次々と刺客が男を襲う。拳銃使い、女剣士の手を経て再び男の元に戻った棺を開けたとき、破壊の女神が解き放たれる。


戦いを通して主人公が人間的に成長するわけでもなく、語り部となる僧侶が棺にまつわる真実を知るわけでもない。何度かある格闘シーンで、誰が一番強いのかを競っているのでもない。ただただ格闘シーンの見本市さながら、剣を交え拳をぶつけあう。その戦い方が毎回違った表現法をとっていれば退屈もしないのだが、ワンパターン。特に破壊の女神との対決は、クライマックスなのにいちばん眠くなる。


冒頭の無数の石像に見守られながら棺を奪うシーンや、拳銃使いが山賊に襲われた僧侶を救うシーンなど、期待させる映像もあったが、そのテンションは単発で持続性がない。また女剣士や棺にまつわりつく女の子もその存在が意味不明で、彼女らの行動には脈絡がない。斬新な表現法も、あくまで物語がしっかりしていてこそ生きてくるということをこの映画の作者は学んだほうがいい。まあ、最初からそんなことわかっているのかもしれないが。。。


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