こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ココシリ

otello2006-06-13

ココシリ


ポイント ★★★
DATE 06/6/9
THEATER シャンテ・シネ
監督 ルー・チューアン
ナンバー 89
出演 デュオ・ブジエ/チャン・レイ/キィ・リャン/チャオ・シュエジェン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


見渡す限り生物の痕跡が見えない荒涼とした風景。動植物はおろか、空気すら希薄な標高5000メートル近い山岳地帯で繰り広げられる滅び行く命を保護するための戦いは、人間の限界線を時に越える過酷さを見せる。凍てつくような寒さと渇き、そして酸素不足や砂地獄の中で、弱い者、不運な者は次々と脱落していく。密猟者を追う山岳パトロール隊の姿を通じて、いまこの地球上で失ってはいけないものは何かという問いを強烈に発する。絶滅寸前の動物だけではない、人間の暮らしもまた守るべきものではないのかと。


中国のチベット山岳地方、ココシリという荒野が広がっている。そこに生息するチベットカモシカが密猟の犠牲になり急激に数を減らしていた。密猟者の実体を取材に来た記者のガイは、リータイ率いる山岳パトロール隊に同行する。しかしそのリポートは想像を絶するような命がけの行程だった。


リータイの使命感の前では人間の命すら軽く思える。密猟者の仲間を捕らえた後、食料が不足すると分ると砂と岩以外何もない場所で解放する。ガソリン切れのトラックに乗っていた部下すら密猟者逮捕のために見捨てていく。その一方で没収したカネを治療費に使い、買出しのために毛皮を売る。無給で働くパトロール隊にとって、目的のためには手段を選んでいられないという現実。密猟者を殲滅する、リータイの心に宿る鋼鉄の意志だけがあらゆる状況において最優先される。


結局、ほとんどの部下を失ったリータイは密猟者に追いつくが、逆にボスに身柄を押さえられる。それでも決してひるむことなくボスを逮捕しようとするリータイ。崇高な使命の前では、自分の命すら省みない。頑固なまでに自らの信じた正義を守り通すリータイという男の生き様の前では、荒々しい大自然の気まぐれすら小さく感じられる。それほどまでに彼の信念は崇高に感じられた。


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