こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

親密すぎるうちあけ話

otello2006-06-16

親密すぎるうちあけ話 CONFIDENCES TROP INTIMES

ポイント ★★*
DATE 06/6/12
THEATER シャンテ・シネ
監督 パトリス・ルコント
ナンバー 91
出演 サンドリーヌ・ボネール/ファブリス・ルキーニ/ミシェル・デュショソーワ/
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


女は自分の性生活を語るうちに満たされぬ心が刺激され、更なる妄想にはまる。男は彼女の言葉に耳を傾けるうちに、自分こそは彼女の空洞を埋めてあげられるのではないかと心に火をともす。女は人妻、男は冴えない風貌の税理士。人妻は美しさゆえはかなさと激しさを身にまとい、税理士は予想のできない彼女の言動に戸惑いを隠せない。女の口から発せられる言葉の裏を読み、何とか本心にたどり着こうとする男の魂の彷徨は心理サスペンスの様相をまとう。しかし、その駆け引きはあくまで男女間の「愛」の範疇を越えることなく、わざわざヒッチコックのようなタッチにする必要はない。


税理士のウィリアムのところに美しい女が突然訪ねてくる。彼女は夫との私生活を赤裸々に語り、去っていく。更にウィリアムをカウンセラーと勘違いしている女は夫の異常な欲望を打ち明ける。しかし、彼が税理士と知った女はアンナと名乗り、その後もなぜか通ってきて濃密なプライベートをウィリアムに聞かせる。


数字と書類に囲まれた退屈な日常。妻にも逃げられ自宅兼オフィスが世界のすべてだったウィリアムには、アンナは人生に闖入してきた傷ついた小鳥。彼女の傷を癒し、願わくばそのまま守ってあげたいというウィリアムのささやかな夢が彼の生活を変えていく。ちょいワルオヤジになりきれない中年男の逡巡がリアルで、セックスを望んでいるアンナに対しなかなか行動に移せない自信のなさが哀愁を誘う。


結局、突然姿を消したアンナを追って、ウィリアムも今までの生活を捨ててリゾート地に居を移す。そこで今度こそ愛を結実させるというハッピーエンドなのだが、何ゆえ犯罪映画を匂わせるような表現法をとったのだろう。女の気持ちは分らないことばかり、それ自体が男を狂わせる犯罪、とでも言いたいのだろうか。本来コメディにするような題材なのに、パトリス・ルコントはミステリータッチにこだわるあまり自縄自縛の陥穽に落ちてしまった。


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